最低賃金、３％上げ必要　成長戦略会議メンバー・アトキンソン氏

　政府の成長戦略会議の有識者メンバーを務めるデービッド・アトキンソン氏は３日までに時事通信のインタビューに応じ、２０２１年度の最低賃金について、３％以上の引き上げが必要との考えを示した。労働生産性が低い中小企業の成長には、引き上げを機に安価な労働力に依存した経営モデルの転換を経営者に促す必要があると訴えた。
　アトキンソン氏は訪日外国人旅行客の誘致を提言するなど菅義偉首相のブレーンとされる。
　最低賃金をめぐり、アトキンソン氏は新型コロナウイルス禍でも米欧は２０年に約５％、２１年も２～４％引き上げていると指摘。日本は２０年度、全国平均で１円増の時給９０２円と事実上据え置いたが、「ワクチン接種の進展で国内景気は改善する。今年度も上げないという話にはならない」と主張。さらに「個人消費の活性化や格差是正にもつながる。日本も上げないと低下した労働分配率を是正する世界の流れに取り残される」と強調した。
　最低賃金が先進国で最低水準にとどまる場合、「経営者が本来払うべき賃金を支払わず、生産性の低い企業の経営モデルを温存させてしまう」とも述べた。雇用の約７割を占める中小企業の規模を連携・合併などを含めて拡大し、生産性を向上させる必要があると提言。「企業の淘汰（とうた）を促すのではく、レベルアップしてもらう」と強調した。
　日本商工会議所はコロナ禍の長期化で中小企業は厳しい経営が続いているとして、最低賃金の据え置きを求めている。アトキンソン氏は打撃が集中する宿泊・飲食・生活関連業が生み出す付加価値は国全体の５％にとどまると指摘し、「（苦境の）一部業種には支援策を講じつつ、経済全体のために引き上げるべきだ」と述べた。
　政府が６月に決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」では、最低賃金を「より早期に１０００円」に引き上げる方針を明記した。（2021/07/04-07:17）

Japan's minimum wages must be raised by at least 3 pct in fiscal 2021, which started in April, David Atkinson, a member of the Japanese government's growth strategy panel, has indicated.
   In a recent interview with the Jiji Press, Atkinson, 56, who is known to be a key adviser to Japanese Prime Minister Yoshihide Suga, stressed the need to use the wage hike as an opportunity to urge the heads of smaller companies with low labor productivity to change current business models that rely on cheap labor.
   He noted that Europe and the United States have raised their wages by around 5 pct in 2020 and by around 2-4 pct in 2021, despite the adverse effects of the novel coronavirus pandemic.
   On the other hand, Japan's minimum hourly wages in fiscal 2020 rose by only one yen from the previous year to 902 yen on average.
   "Japan's economy is expected to improve on the back of the spread of COVID-19 vaccinations," Atkinson said in Japanese, adding that the country should not keep wage levels almost unchanged for this fiscal year.