釜石ラグビー、市民と共に 桜庭吉彦さん「同じ目標、大きな財産」―震災10年
東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市。かつてラグビー日本選手権で新日鉄釜石が7連覇を達成し、2019年ワールドカップ(W杯)日本大会の開催地にもなった「ラグビーの町」として知られる。新日鉄釜石の流れをくむクラブチーム、釜石シーウェイブス(SW)のゼネラルマネジャーを務める桜庭吉彦さん(54)は、震災後の10年をこう振り返る。「W杯という同じ目標に向かって進めた。これは大きな財産になった」
震災直後の光景は、ありありと覚えている。がれきの中で選手と一緒にボランティア活動に打ち込みながら、「惨状を目の当たりにして、本当に再生できるのか不安になった。ラグビーどころじゃないと思った」。しばらくして19年W杯の開催地に立候補しようという機運が高まっても、「それが正しいことなのか」と懐疑的だったという。
だが、多くの市民から「ラグビーで元気にして」と声を掛けられ、「W杯を招致することが復興を加速することにつながる」との思いに変わった。W杯のアンバサダーとして広報活動に奔走。津波の被害が大きかった鵜住居地区に建設された「釜石鵜住居復興スタジアム」が復興のシンボルとなり、W杯は大成功を収めた。「たくさんの笑顔が会場と町で見られた。非常にうれしい瞬間だった」。感慨深い記憶だ。
W杯の招致に成功して以降、釜石SWのジュニアチームに加入する子どもたちは増える一方。新型コロナウイルスの拡大という逆風はあったが、市民のラグビー熱は冷めていないと感じている。トップチームは22年1月に開幕予定の新リーグ参戦に向け、着々と準備中。「地方を代表するチームとしての役割は大きい。リーグの成功に貢献できるように強くして、10年後にはチャンピオンを争うチームになりたい」。今後も市民と共に、夢に向かって歩んでいく。
◇桜庭吉彦さんの略歴
桜庭 吉彦(さくらば・よしひこ) 現役時代はロックで活躍。秋田工高でラグビーを始め、3年時に全国高校大会で優勝した。卒業後に新日鉄釜石に入社。1986年に日本代表入りし、W杯には87、95、99年大会に出場。新日鉄釜石がクラブ化した釜石シーウェイブスではヘッドコーチも務めた。2006年に現役を退き、16年からゼネラルマネジャー。54歳。秋田県出身。(2021/03/10-13:32)
10 Years On: Rugby Lifts Spirits in Tsunami-Struck Kamaishi
Passion for rugby football in Kamaishi, Iwate Prefecture, offers a beacon of hope for the northeastern Japan city ravaged by the March 2011 earthquake and tsunami, Yoshihiko Sakuraba, general manager of a local club team, said.
"We were able to aim for the same goal, the World Cup," Sakuraba, 54, of the Kamaishi Seawaves Rugby Football Club said of his relationship with the city in the decade after the disaster. "That became a great asset."
Kamaishi hosted matches in the 2019 Rugby World Cup in Japan, living up to its name as a "rugby town." The Seawaves are the successors of a former Kamaishi-based corporate team that won the national championship seven consecutive times.
Sakuraba said that he remembers vividly the sight of the city in the immediate aftermath of the quake and tsunami. He said that he began to have doubts about continuing with the sport while volunteering to clean up the rubble with players from the team.
"In the face of the calamity, I became unsure about whether we could recover," he said. "I felt that now was not the time for rugby."
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