今も残る1万5000点 「思い出の品」展示終了へ―津波被災の福島・浪江町
東日本大震災後、福島県沿岸部の津波被災地で発見された写真や学用品などを保管する「思い出の品展示場」(同県浪江町)が、21日に閉鎖される。被災者との再会を見届けてきた職員の川口登さん(71)は、残った約1万5000点を前に、「町民同士の再会の場でもあったが、けじめをつけなければ」と複雑な胸中を語った。
2014年の開所以降、延べ1万人を超える人が訪れ、2300点以上が持ち主に戻った。震災から10年を迎え、来場者も大幅に減少。町などが閉鎖を決めた。
川口さんの自宅も津波で全壊。田んぼで作業していたため避難できたが、自宅にいた両親を失った。東京電力福島第1原発事故の影響で約2カ月半、町内に立ち入ることができず、遺体の確認も1カ月後に写真で行った。「津波が来るなんて誰も思わなかった。もっと早く立ち入ることができれば助けられたかもしれない」と悔やむ。
自宅のあった地域は災害危険区域に指定され、住むことはできなくなった。震災前に2万人を超えた町民は全国に散り、人口は1500人ほど。川口さんも現在は相馬市で暮らす。
展示場には、避難した町民が墓参や役場での手続きのついでに訪れ、情報交換の場ともなっていた。川口さんは「ここでみんなと再会することが楽しみだった。帰ってくる場所をつくってほしい」と肩を落とした。
2月26日、避難先の静岡県富士市から家族3人で展示場に来た佐々木正信さん(51)が、こいのぼりの吹き流しを持ち帰った。昨年、震災後初めて帰還した際に見つけていた。「両親が初孫の記念に家紋を入れて作った特別な物。確信が持てず迷っていたがせっかくだから」
ぬいぐるみやおもちゃなどは、閉鎖日を過ぎれば処分される。川口さんは「年月とともに熱い思いが薄れてしまったんだろう。名前が書いてあるものだけでも返したかった」と寂しげに語った。(2021/03/09-05:48)
10 Years On: Tsunami-Hit Town to End Project to Return Mementos
Ten years after being hit by a massive earthquake and tsunami, the town of Namie, Fukushima Prefecture, northeastern Japan, is set to end its project to return mementos found in affected coastal areas.
The town has had mementos, such as photos and school goods, on display at a facility opened in the town in 2014 so that residents afflicted by the March 11, 2011, disaster can find their own belongings or items of their loved ones. March 21 this year will be the last day of operation for the facility.
"This place has also been a site of reunion for residents. But a line has to be drawn," said Noboru Kawaguchi, 71, who has worked as a staffer of the facility. Some 15,000 items remain unclaimed at the site.
Since its opening, over 10,000 people have visited the mementos storage facility, and more than 2,300 items have been returned. The Namie town government decided to close it as the number of visitors has fallen sharply a decade after the disaster.
Kawaguchi's house was destroyed by the tsunami. Kawaguchi, who was working at a paddy field when the disaster struck, was able to evacuate, but his parents, who were at home, could not.
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