2021.11.02
スポーツ
【冬季五輪】「銀盤の記憶」男子フィギュアスケート (10/30)
2010年 バンクーバー冬季五輪 エバン・ライサチェク(米国) バンクーバーで輝いたのは、4回転ジャンプを跳ばなかったライサチェク。米国勢としては6大会ぶりとなる優勝に、「僕のために星条旗が揚がっていくなんて、信じられない」。金メダルにそっと触れ、柔らかい笑みを浮かべた。 最終組で最初に演技した。冒頭の3回転ルッツ―3回転トーループを手始めに、すべてのジャンプを堅実に決めていく。長い手足を生かしたステップとスピンでも観衆を魅了。ほぼ完ぺきにプログラムをこなし、フリーで自己ベストの167.37点をたたき出した。 あとはライバルたちの演技を見届けるだけ。「大輔(高橋)も、プルシェンコもみんなうまいなと思って見ていた」。その高橋は4回転で転倒し、プルシェンコもどこか切れ味がない。モニターで逆転優勝を知ると、周囲と抱き合って歓喜した。 金メダリストには4回転が必要―。そう繰り返していたプルシェンコの主張は、4回転なしで世界選手権を勝ったライサチェクへの挑発にも聞こえた。言葉ではなく結果で見返し、「プルシェンコはきょうも素晴らしい滑りをした。僕は何年も彼を称賛してきたんだ」と余裕たっぷり。ぶれずに自分の演技を貫いたから、この金メダルがあった。(写真はAFP時事)(2010年02月18日)