統合作戦司令部、24日発足=陸海空3自衛隊を一元指揮―平時から有事まで対処・防衛省

陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」が24日、発足した。南雲憲一郎司令官以下240人体制で、有事の即応性や抑止力の向上を目指す。
統合作戦司令部は防衛省統合幕僚監部から指揮部門を切り離す形で設置。東日本大震災で当時の統合幕僚長が首相らへの説明に忙殺されたことが構想の原点とされ、指揮官が部隊運用に専念できる体制創設が、2022年策定の安全保障関連3文書で明記された。防衛省幹部は「統幕長が過労で倒れた例もある。1人に負担と職務を集中させるのはリスク」と語る。
期待される役割の一つが、平時から有事までの円滑な対応だ。これまでは事案が起きるたびに各自衛隊から「統合任務部隊」を編成していたが、今後は平素の訓練から有事まで一貫してシームレスな体制で対処する。
不明な相手からのサイバー攻撃や偽情報の流布、領空・領海周辺での挑発的活動など、武力攻撃に至らないグレーゾーンの事態は多様化している。司令部の常設化で、こうした複雑な状況にも柔軟な対応が可能になる。
従来の陸海空に加え、宇宙やサイバー空間も対象とする現代戦では、各分野を組み合わせて相乗効果を出すことが重要とされる。政府が整備を進めている反撃能力(敵基地攻撃能力)はその最たるもので、長射程ミサイルや衛星などを組み合わせた作戦になる。同司令部は訓練や任務を通じてノウハウを蓄積し、反撃能力の運用の中核を担う。
大規模災害や領空侵犯、海外邦人退避などが同時並行で起きた場合の対処力も高まる。吉田圭秀統幕長は定例会見で「何を優先して部隊を振り分けるか、全体を把握した指揮ができるようになる」と強調した。
同様の司令部は各国にあり、連携が深まりそうだ。米軍との関係では、戦略協議は統幕長と米統合参謀本部議長、作戦調整は統合作戦司令官と米インド太平洋軍司令官と、それぞれのカウンターパートが明確化する。統合作戦司令部は、在日米軍や米インド太平洋軍との調整役も務める。
初代司令官の南雲氏は統幕副長として23年から吉田統幕長を支えた。自衛隊幹部は、統幕長と司令官の意思疎通が運営の要だとした上で、「両者で思惑や情報把握に差が出れば、調整や報告が複雑化し、『屋上屋(を架す)』との批判を招く」と話す。今後の司令官は陸海空からバランスを取って任命されるとみられるが、統幕長との相性や指揮能力が担保できるかが問われる。人手不足の中で、司令部要員をどう確保するかも課題となる。
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