中国、民間企業重視にかじ=「5%前後」成長達成へ―トランプ関税、景気に影
中国の習近平指導部が、民間企業を経済成長の主要エンジンと位置付ける方針へとかじを切っている。トランプ米政権による対中関税の引き上げで低迷する景気の先行きが一段と不透明になる中、民間活力を取り込むことで、「5%前後」とする2025年の経済成長目標の達成を目指す。
◇6年ぶり出席
「民営経済は発展の可能性を秘め、前途有望だ」。習国家主席は2月、有力民間企業の経営者らを招いた座談会でこう訴えた。習氏出席の座談会は6年ぶりだ。
今月11日に閉幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で採択された25年の政府活動報告は「民営経済の発展を促す政策を着実に実行」と明記。高成長を保つため「使えるものは何でも使う」(外交筋)考えだ。
中国では不動産バブル崩壊で景気低迷が長期化。民間企業は国内総生産(GDP)の6割超を占めるとされ、5%成長達成には民間企業のてこ入れが欠かせない。
こうした中でトランプ政権は中国製品に対する関税を計20%引き上げた。米中貿易戦争の激化で、中国のGDPが最大で1.5%押し下げられるとの試算もある。
電子商取引最大手のアリババ集団や人工知能(AI)開発企業のディープシーク(深度求索)など数多くの有力民間企業が拠点を置く浙江省杭州。地元政府は企業と連携して起業を目指す若者を支援し、低利融資制度なども整備する。起業を志す女性は「良い取り組みだ」と政策を評価する。
◇くすぶる不信感
ただ、民営経済の先行きをいぶかる声は根強い。習氏は本心では国有企業重視の考えを変えていないとされ、「民間への融和的な姿勢は一時的だろう」(大手メーカー幹部)と冷ややかな見方さえ漏れる。
実際、中国政府は10年代にも民間企業への支援に力を入れ、アリババや配車サービス最大手の滴滴出行(ディディ)といった世界的なIT企業が成長するきっかけを作った。ところが、20年には方針を一変させ、両社に多額の罰金を科すなど締め付けを強化。アリババ傘下の金融会社アント・グループの株式上場を中止に追い込んだ。
中国で民営経済が発展し、「民間企業発祥の地」とされる浙江省温州の靴卸売業経営者は「政府はビジネスの邪魔をするだけだ」と手厳しい。政府がコロナ禍のロックダウン(都市封鎖)で企業活動を停止させた記憶はまだ新しい。
中国では労働者全体の8割超が中小企業で働いているとされ、5%の成長を実現させる上で中小企業の振興は不可欠だ。だが、政府が掲げる民間企業重視の政策効果が、中小零細企業にも及ぶかどうかは不透明だ。
[時事通信社]
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