看板政策前面、実現に疑問符=施政方針演説
石破茂首相は初の施政方針演説で、全体の3分の1を割いて「地方創生2.0」を推進すると力説した。過去2回の所信表明演説で浴びた「石破カラーが見えない」との批判を踏まえ、自身の看板政策を前面に押し出した形だが、具体策を巡っては既視感が拭えず、実現性にも疑問符が付く。
首相は演説で「地方創生」を「楽しい日本」実現に向けた「核心」と位置付けた。その上で田中角栄元首相の「日本列島改造」になぞらえ、「令和の日本列島改造」を強力に進めると表明した。田中元首相に師事し、第2次安倍政権で初代の地方創生担当相を務めたとの自負がのぞく。
とはいえ、男女の賃金格差是正や中小企業の賃上げ支援はいずれも政府が従来取り組んできた政策。「都市と地方の二拠点活動」には政府内から「実現性があるとは思えない」との批判が上がり、「政府関係機関の地方移転」には「かつてついえた首都機能移転と同じ」との声も漏れる。
独自色発揮に向け、首相は持論の政党法制定を視野に「政党や政治団体の規律を担保するための法制度」を訴え、衆院選挙制度改革を念頭に「あるべき選挙制度の議論」を呼び掛けた。しかし、首相には、野党の協力なしでは何も前に進められない少数与党の重い現実がのしかかる。
首相は締めくくりに「与野党ともに責任ある立場での熟議」の必要性を強調した。ただ、演説では立憲民主党などが重視する自民党派閥の裏金事件の真相究明や選択的夫婦別姓の導入に触れなかった。演説で打ち出す政策やビジョンを実現できるかは、首相が国会で政策の必要性や実現可能性を丁寧に説明し、野党の主張にも耳を傾けて合意形成を図れるかに懸かっている。
[時事通信社]
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