元妻に無罪判決=資産家死亡、無期懲役求刑―和歌山地裁
和歌山県田辺市で2018年5月、「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の会社経営野崎幸助さん=当時(77)=を殺害したとして、殺人と覚醒剤取締法違反の罪に問われた元妻須藤早貴被告(28)の裁判員裁判の判決が12日、和歌山地裁であった。福島恵子裁判長は「誤って致死量を摂取した可能性は否定できない」として無罪(求刑無期懲役)を言い渡した。
事件への被告の関与を直接的に裏付ける証拠はなく、公判では野崎さんは殺害されたのかという「事件性」と、被告が殺害したのかという「犯人性」が主な争点となった。
検察側は財産目当てで結婚した被告が、巨額の遺産を得るために殺害したと訴え、事件前にはインターネットで「老人 完全犯罪」などと検索していたと指摘。事件直前、自宅には二人きりで第三者の関与は考えにくく、自殺や事故の可能性はないとした。
これに対して弁護側は、被告が野崎さんから毎月100万円を受け取っていたことから「(殺害して)収入源を失うことは被告にとってデメリット」だとして、殺害する動機がないと強調。野崎さんが自分で覚醒剤を摂取したか、第三者に摂取させられた可能性があると主張した。
起訴状によると、須藤被告は18年5月24日、自宅で野崎さんに致死量の覚醒剤を摂取させ、急性中毒で死亡させたとされる。
◇判決骨子
一、被告が致死量を超える覚醒剤を摂取させることは可能で、動機となり得る事情もあった
一、殺害を疑わせる事情はあるが、被告が殺害したと推認するには足りない
一、初めて覚醒剤を使用した被害者が、誤って致死量を摂取した可能性がないとは言い切れない
一、起訴内容については犯罪の証明がない
◇資産家死亡を巡る動き
2018年 2月 野崎幸助さんが須藤早貴被告と結婚
5月 野崎さんが自宅で死亡
21年 4月 和歌山県警、殺人などの容疑で須藤被告を逮捕
5月 和歌山地検が起訴
24年 9月 初公判で須藤被告が無罪主張
11月 検察側が無期懲役求刑、弁護側は無罪主張し結審
12月 和歌山地裁で無罪判決
[時事通信社]
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