退職金税制の見直し、再び議論=昨年は具体化見送り―政府・与党
政府・与党は2025年度税制改正に向けた議論で、退職金税制の見直しを採り上げる。退職金を一時金として受け取る際に納める所得税について、同じ会社で長く働くほど負担軽減効果が大きくなる制度を働き方の変化に合わせるのが狙い。ただ、見直しは、勤続年数が20年を超える給与所得者には増税となる可能性がある。昨年は「サラリーマン増税」と批判されて具体化を先送りしており、今年議論を深められるかは不透明だ。
現行制度は、退職金支給額から退職所得控除額を引いた額の2分の1に所得税を課す仕組み。控除額は、勤続20年までは1年につき40万円で、20年を超えると1年につき70万円。勤続30年で2000万円の退職金を受け取る場合、控除額は1500万円で、これを引いた500万円の半額、250万円に所得税がかかる。
勤続年数に応じて控除額を決めているのは、長期雇用が一般的だったためだ。しかし、若年層を中心に多様な働き方が広がり、転職が珍しくなくなってきた実態にはそぐわないとの指摘がある。政府税制調査会(首相の諮問機関)が今月15日に開いた専門家会合では、委員から「若い人の選択が変わりつつあり、(働き方に)中立な税制を検討してもらえるといい」との意見が出された。
自民党税制調査会の宮沢洋一会長は既に、退職金を含む年金関係税制について「(今年の税調で)議論をしていくことになる」との考えを示しており、25日に本格スタートする税調でテーマの一つに位置付ける。
ただ、今年は「年収の壁」を引き上げるための所得税減税が焦点となる。退職金税制を中立的にすれば、現行制度の維持を前提に老後の生活設計を描いてきた中高年層では退職金の手取りが減る懸念もあり、議論が進むかどうかは見通せない。
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