米経済に不透明感=雇用鈍化、大統領選で
【ワシントン、ニューヨーク時事】米大統領選の投開票日が迫る中、良好だった米経済の先行きに不透明感が強まっている。1日に発表された10月の雇用統計では、雇用の伸びが急減速した。ストライキやハリケーンの影響が出た格好だが、労働市場が確実に鈍化していることが示された。選挙結果次第では経済政策などの転換が予想され、企業の投資手控えも指摘される。
雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比1万2000人増と、伸びが9月(22万3000人増)から大幅に縮小した。航空機大手ボーイングのストにより、製造業の就業者数が4万6000人減となったことが響いた。
さらに、9~10月に大型ハリケーン「ヘリーン」と「ミルトン」が米南部を相次いで襲い、大きな人的・物的被害をもたらした。小売業やレジャー・接客業などの就業者数も減少し、労働市場が「ハリケーンで予想以上に悪化した」(米金融大手)とみられる。
ストもハリケーンも一時的な要因のため、ホワイトハウス高官は「米経済は依然として非常に強い。基調的な雇用の伸びは恐らく15万人程度」とみる。ただ、8、9両月の就業者数も従来発表より計11万2000人下方修正されるなど、「雇用は極めて強いとは言えない」(日系証券)との見方が広がる。
11月5日投開票の大統領選では、民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領が大接戦を演じ、予断を許さない状況だ。トランプ氏は返り咲いた場合、バイデン政権が進めた電気自動車(EV)普及政策の撤回を明言しており、気候変動対策を抜本的に見直す構えだ。選挙に絡む不透明感が企業活動に影を落としている。
アトランタ連邦準備銀行の7~9月期の企業CFO(最高財務責任者)調査では、選挙に関連した不確実性により投資計画の「延期」「縮小」「無期限延期」を余儀なくされたとの回答が3割に達した。前出の日系証券関係者は「米国の新政権がどうなるかまったく分からない。企業は思い切った設備投資ができない状態だ」と語った。
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