緊急事態条項、賛否交錯=改憲論議の焦点に―各党公約・憲法【24衆院選】
コロナ禍、ウクライナ危機、南海トラフ地震臨時情報。近年、自然災害や武力攻撃などへの懸念が強まっている。国民生活に大きな影響を及ぼす事態が起こった場合、政府はどのように国民の生命・財産を守るのか。その手段の一つとして、与野党間で賛否の交錯する論点が、憲法改正による緊急事態条項の創設だ。
◇議員任期延長が中心
緊急事態条項は、戦争やテロ、大規模災害、感染症流行などに対処するため、政府の権限を一時的に強化する規定。(1)国会機能を維持するための国会議員の任期延長(2)内閣が暫定的に立法措置を行う緊急政令―などが想定される。
岸田政権下で、衆参両院の憲法審査会の議論は、議員任期延長の是非が中心だった。これに賛成する自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党は、改憲条文案の作成を進めるよう主張。これに対し、立憲民主党は憲法54条が定める参院の「緊急集会」活用などを訴えている。
改憲実現を党是とする自民だが、石破茂首相(自民総裁)が描くプロセスは明確ではない。衆院選が公示された15日のNHK番組では、改憲項目に関して「与野党一致ができるものはたくさんあるのだろう」と述べるにとどめた。
◇第一声で言及なく
改憲について、自民は衆院選の公約で緊急事態条項の創設や、9条への自衛隊明記などを提起。「早期に実現する」と従来の党方針を踏襲した。首相の持論は、戦力不保持を定めた9条2項の削除だが、一切触れずに「封印」した格好だ。
公明は、衆参で意見の隔たりが大きい。緊急事態条項を推す衆院側に対し、参院側は緊急集会を重視する立場。そのため、議員任期延長について公約は「さらに議論を積み重ねていく」との表現にとどまった。
立民の対応も苦しい党内事情が透ける。野田佳彦代表は党勢拡大に向けて穏健な保守層の取り込みを図るが、改憲を巡ってはリベラル系議員を中心に慎重論が根強い。公約では「論憲」を掲げる一方、緊急事態条項の必要性は否定した。
共産党は「改憲に断固反対」と明記している。
もっとも、衆院選では「政治とカネ」の問題などに隠れ、改憲論議は深まっていない。公示日の第一声でも、自民、公明、立民、維新、国民の党首らは、このテーマに言及しなかった。
[時事通信社]
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