同盟強化へ試される手腕=独自政策、懸念相次ぐ―石破新内閣の課題・外交
石破茂首相は、米国をはじめ同盟・同志国との関係を重視した岸田政権の外交路線を踏襲し、連携強化に注力する方針だ。ただ、日米地位協定改定や「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」創設など、自民党総裁選で掲げた独自政策には懸念の声が相次ぐ。米側との調整を含め、外交手腕が試されることになる。
中国の覇権主義的な動向や北朝鮮の核・ミサイル開発など日本周辺の安全保障環境の悪化を踏まえ、首相は日米同盟の抑止力・対処力の強化を目指す。11月の米大統領選で新大統領の選出後、首脳間の関係構築のため、早期訪米にも意欲を示している。
首相が見直しを訴える日米地位協定は、締結から一度も改定されたことがない。アジアでNATOの集団防衛にならった仕組みの構築も、憲法との整合性など実現のハードルは高い。いずれも米側との交渉は難航必至で、同盟関係が揺らぐリスクもはらむ。
対中国では、習近平国家主席らとの直接対話で関係改善を探る構え。しかし、中国広東省深セン市で日本人男児が刺殺された事件が重くのしかかる。日本側の求める事実関係の解明に、中国側は積極的とは言い難く、首相も厳しい姿勢で臨まざるを得ない状況だ。
東京電力福島第1原発の処理水放出を巡っては、中国と日本産水産物の禁輸措置緩和で合意したものの、具体的な再開時期は見通せない。
韓国とは、首脳が相互に往来する「シャトル外交」継続など関係改善を進める。
一方、北朝鮮による日本人拉致問題の解決は、なお課題として残されたまま。ウクライナ侵攻でロシアとの関係が悪化し、北方領土問題を含む平和条約締結交渉の進展も見込めない。
首相は10、11両日の日程で東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議への出席を調整。実現すれば、首脳外交デビューの場となる。
[時事通信社]
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