日本政府、北極で「法の支配」目指す=中ロ念頭、欧米と連携強化―第2部「蒼い北極」(1)・〔66°33′N=北極が教えるみらい〕
政府は、ロシアや中国が進出を強める北極圏について、「法の支配」に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を図る方針だ。海洋国家・日本の強みを生かし、欧米など北極圏諸国と連携を深め、資源探査や航路開拓をにらんだ北極外交に力を入れる。
上川陽子外相は時事通信のインタビューで、北極海について「法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持・発展の確保を重視する」と表明。軍事連携を強める中ロの動向を注視し、「国連海洋法条約と整合的でない形で排他的な航路の規制を設けたり、資源の独占的利用をしたりすることは認められない」とけん制した。
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北極圏は地球温暖化で海氷が減少し、新航路開拓や資源開発を巡る各国の競争が激しさを増す。北極圏に最大の領土を有するロシアは、北極海航路の貨物輸送量拡大や資源開発を進め、軍事施設整備など軍事活動を一段と強化。中国は巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として「氷上のシルクロード」構想を掲げ、インフラ投資を活発化させる。中ロは米アラスカ州沖での合同パトロール実施など軍事面の連携も強化している。
米国防総省は7月に発表した北極圏に関する戦略文書で、中ロの連携強化が「北極圏の安定と脅威」の構図を変えると警戒。同盟国などと連携して安定維持を図る方針を示した。こうした状況を踏まえ、日本は北極圏諸国を含む関係国との協力強化に取り組んでいる。
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上川氏は1月に訪れたフィンランドで、日本と北欧の協力強化を盛り込んだ外交方針「北欧外交イニシアチブ」を公表。「北極と海洋」を柱に掲げ、海洋秩序の維持・強化を図る考えを示した。
イニシアチブでは日本初の砕氷機能を持つ北極域研究船「みらいII」による国際共同研究や、北極圏8カ国で構成する「北極評議会」を通じた貢献の継続など、持続可能な北極の利用に向けた連携を深める方針を打ち出した。
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日本が注力するのは、地球温暖化への対応に加え、資源開発や北極海航路の利活用に積極的に関与したいためだ。日本の強みである観測をはじめとする科学技術分野の知見を生かし、「自由で開かれた北極」実現を目指す。
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▽ニュースワード「北極評議会」
北極評議会 北極圏8カ国によって1996年に設置された多国間フォーラム。持続可能な開発や環境保護など共通課題での協力促進が目的。軍事・安全保障は扱わないとされている。
メンバー国は米国、ロシア、カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンで、日本は2013年からオブザーバー参加。ロシアのウクライナ侵攻を受け、ロシア以外のメンバー7カ国がロシア議長国下での会合不参加を表明。23年5月、議長国がノルウェーに交代し、活動が再開された。
[時事通信社]
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