双方とも支持基盤固め=前嶋和弘・上智大教授(米国政治)―米大統領選討論会・識者談話
トランプ、ハリス両氏が主張を否定し合い、議論はかみ合っていなかったが、双方の意図通りでもある。既存のそれぞれの支持層は改めて、自らが支持する候補がふさわしいと確認しただろう。現時点でどちらが有利になったということはなく、史上まれに見る大接戦となりそうだ。
トランプ氏は相変わらず不規則発言が多かったが、ハリス氏はうまく対応した。若さもアピールできた。既存の民主党支持層は、ハリス氏のテレビ討論の場数の少なさを不安視していたが、納得度は高まったのではないか。
トランプ氏は移民に関し、住民が飼っているイヌやネコを食べているなどという無根拠の主張をしていた。司会者が事実ではないと否定したのは適切だったが、もともと副大統領候補のバンス氏の発言で広まった内容で、トランプ氏の支持者はそうした主張も信じてしまう。
2020年大統領選の投票では、郵便投票と期日前投票が計約6割を占めた。トランプ氏のこうした発言は、これから本格化する郵便投票や期日前投票に臨む有権者に受けることを意識したようだ。
両者とも政策に関する新たな主張はなかった。既存の支持層は固めたが、米国内の分断は続いていく。今後は、無党派層のそれぞれ約3分の1を占めるとされる共和党寄り、民主党寄りの有権者が実際に投票するかどうかが焦点となる。大接戦が予想される中、自分の票が左右するとなれば、無党派層の投票を後押しする討論会になったということは言えるのではないか。
[時事通信社]
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