米ボーイング、低空飛行=宇宙・航空事業で続くトラブル―日本企業にも影響
【ニューヨーク時事】米航空機大手ボーイングが相次ぐ困難に直面している。同社が開発した新型宇宙船「スターライナー」は6月、初の有人試験飛行に挑戦。国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士を送り届けたが、その過程で不具合が見つかり、飛行士を帰還させることができなくなった。民間航空機部門も深刻なトラブルや新型機開発の大幅な遅延に見舞われており、影響は部品を供給する日本企業にも及んでいる。
米航空宇宙局(NASA)は2014年、ISSに人員を輸送する宇宙船の開発をボーイングと米宇宙企業スペースXに委託した。ボーイングとの契約額は42億ドル(当時のレートで約4500億円)。計画はたびたび遅れ、今年ようやく有人飛行にこぎ着けたが、ヘリウム漏れなどの問題が発生。NASAはスターライナーを無人で地上に降下させ、ISSに滞在する飛行士はスペースXの宇宙船で帰還させることを決めた。
計画が遅れるたびにボーイングの開発費負担は増加。米メディアによると、関連損失は既に16億ドル(現在のレートで約2300億円)に達しているが、今後さらに膨らむ恐れもある。
民間航空機事業も逆風にさらされている。今年1月には飛行中の737MAX9型機の機体側面の一部が吹き飛ぶ事故が起きた。各国の航空会社はボーイング機の安全性に疑念を強めており、これ以外の機種でも受注が低迷している。
日本のメーカーが主要部品を納入し、「準日本製」ともいわれる787型機も生産が落ち込んでいる。主翼を供給する三菱重工業は「コロナ禍で減少した同機の生産の回復が鈍く、われわれの売り上げにも影響が及ぶ」と懸念を示す。
8月には、開発中の大型旅客機777Xに不具合が見つかり、ボーイングは飛行試験の一時停止を発表。当初20年だった納入予定は25年に延期されているが、その実現も危ぶまれる状況だ。中央翼の組立工場を愛知県半田市に新設したSUBARUは「量産開始時期について、新たな見通しは今のところ示されていない」としている。
[時事通信社]
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