世代と国を超えた熱意=玉井まで続いた系譜―男子高飛び込み〔五輪〕
男子高飛び込みの玉井が手にした銀は、日本の飛び込み史上初めての五輪メダルだ。約100年の歴史と共に、関係者の熱意が詰まっている。
最後の演技を終えたヒーローを泣きながら抱き締めたのは馬淵崇英コーチ。飛び込み大国の中国出身。才能を見極める確かな目を持ち、数々のオリンピアンを育成。日本国籍も取得して尽力してきた。
玉井からメダルを首に掛けてもらい、「三十何年間も長い間、恋人のようにメダルを追い掛けて、きょう正式に結婚できた」と感激した。
「僕が6回五輪に出てコーチに掛けてあげられなかったメダルを、こんなにすぐやってくれて、ありがとうしかない」と手放しで褒めたのは、寺内健さん。馬淵さんがコーチとして駆け出しの頃から、共に五輪への挑戦を続けてきた。
弟弟子のことを「努力できる天才」と表現。「玉井みたいにかっこよく飛びたいということで底辺に広がるかもしれない」。注目が高まることによる効果にも期待を寄せる。
この一つの系譜を構築したのが、馬淵かの子さんだった。自身は1956年メルボルン五輪などに飛び込み選手として出場。引退後にスイミングクラブのコーチとして熱心にスカウトしたのが崇英さんだった。
かの子さんから手ほどきを受けたことがある玉井は歴史を変えた今、自身を導いてくれた恩師たちに伝えたい思いがある。「もう言葉はいらない。メダルと僕の笑顔で喜んでもらいたい」。形に残るものを持ち帰り、達成感を分かち合う。この瞬間をみんな待っていた。 (時事)
[時事通信社]
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