マネー逆流、株安・円高加速=日銀利上げ契機に
日銀の7月末の追加利上げ決定をきっかけに、金融市場が急変している。利上げ前までの株高・円安基調が一転し、日米金利差縮小を意識して円を買い戻す動きが強まり、株式市場に向かっていた資金はパニック的に逃避。投資マネーが一気に逆流し、株安・円高が加速している。
日銀の追加利上げについて、市場では9~10月ごろとの見方が多く、7月末は大方の想定よりも早いタイミングだった。意外感が広がる中、植田和男総裁は利上げ決定後の記者会見で、「短期金利のもう一段の調整があり得る」と年内の再利上げを示唆。市場では「日銀は利上げに積極的なタカ派に変身した」(国内証券)と先行きへの警戒感が急速に高まった。
米国では景気減速観測から9月の利下げが確実視されている。日米の金融政策の方向が正反対となり、日米金利差が縮小するとの見方が台頭。円相場は日銀の利上げ決定前日の1ドル=155円台前半から5日には一時141円台後半まで急伸した。
円高への急速な反転で、日本経済を引っ張る自動車など輸出企業の業績悪化への懸念が浮上。東京株式市場では売りが売りを呼び、5日の日経平均株価の下落幅は米国株が大暴落した1987年の「ブラックマンデー」の翌日に記録した下げ幅を超えて過去最大となった。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「日銀によるこれまでの異例の金融緩和が過度の円安・株高を生み出した」と指摘。その上で「追加利上げがその崩壊の引き金の一つになった」との見方を示している。
[時事通信社]
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