日銀、利上げ局面入り=「0.5%」超えが焦点
日銀が、利上げを継続的に実施する局面に入った。2%物価上昇目標の持続的・安定的な実現が近づけば、さらなる利上げを検討する。経済の長期停滞で、日銀の政策金利は過去30年近く「0.5%」を超えたことはない。賃金と物価がともに上がる「好循環」が強まり、低インフレと低金利、低成長の「低温経済」から抜け出せるかが今後の焦点となる。
コロナ禍後の歴史的な高インフレに直面し、急ピッチな利上げを進めた米欧は、利下げ局面を迎えている。欧州中央銀行(ECB)は6月に利下げを開始。米連邦準備制度理事会(FRB)も9月に利下げに転じるとの見方が強い。
一方、3月にマイナス金利政策を解除した日銀は7月31日の金融政策決定会合で、短期金利の誘導目標を「0~0.1%程度」から「0.25%程度」に引き上げた。米欧との金利差が縮まれば、歴史的な円安水準から円高方向への修正も見込まれる。
2%目標が実現した場合の政策金利の到達点について、日銀は「ほぼ中立金利の近辺」(植田和男総裁)と説明。中立金利とは景気を刺激することも冷ますこともない金利水準で、1~2.5%程度と推計される。少なくとも1%まで利上げするとの見方もできる。植田総裁は同日、会合後の記者会見で「0.5%を壁として意識していない」と語った。
日銀は2006年3月に量的金融緩和を解除した後、同年7月と07年2月に0.25%ずつ0.5%まで利上げした。しかし、08年秋にはリーマン・ショックに見舞われ、量的緩和に逆戻りした。
今回の利上げ局面でも、0.5%を超えるのは難しいとの予想もある。みずほリサーチ&テクノロジーズは、25年1~3月期にもう一度利上げした後、0.5%で打ち止めになると想定。「中小企業を中心に企業収益が伸び悩み、賃金の伸びも鈍化する」とみる。
利下げを視野に入れる米国経済は、軟着陸(ソフトランディング)に向かうとの見方が強い。ただ、米景気が急速に悪化すれば「日本経済にも悪影響が及び、日銀は利上げを休止せざるを得なくなる」(大手証券)との指摘もある。
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