報復連鎖なら紛争拡大も=ハマス立て直し困難か―親イラン勢力の動向焦点
【カイロ時事】イスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏が31日にイランで殺害され、パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルとハマスの戦闘の停戦交渉の行方は不透明になった。これに先立ち、イスラエル軍はレバノン首都を空爆し、イスラム教シーア派組織ヒズボラ幹部を殺害。ハマスと連帯するヒズボラやイランがイスラエルに報復すれば、中東で紛争が拡大しかねない。
◇交渉破綻も
イスラエルはハニヤ氏を暗殺したと認めていないが、対外的にハマスを代表する同氏の殺害は、交渉を破綻させる可能性がある。交渉を仲介してきたカタールのムハンマド首相は「一方が交渉相手を暗殺した際に、どのように調停は成功するのか」とX(旧ツイッター)に投稿した。
ハマスのアブマルズーク幹部は「対応することなしでは済まされない」と述べ、強硬姿勢を見せている。別の幹部はハニヤ氏死亡を受けても「(組織には)影響はない」と断言。イスラエルへの抵抗を続けると語った。
ただ、ハマスはこれまでの衝突で戦闘員の多くを失い、軍事部門トップのムハンマド・デイフ氏も7月中旬にイスラエル軍の空爆で殺害されたとみられている。カイロ在住のパレスチナ人政治専門家アブドゥルムハディ・ムタワ氏は、軍事部門トップと最高指導者を失ったハマスが組織を早期に立て直すのは「困難だ」と主張する。
◇明確なメッセージ
イスラエル軍の元高官は地元メディアに、ハニヤ氏殺害は「(責任から)誰も免れない」という明確なメッセージをハマスのガザ地区トップ、シンワル氏らに届けたと指摘。停戦交渉は一時中断する可能性があるものの、最終的にはハマスが折れるとの見方を示した。
ムタワ氏も、「ハマス指導者は自分の身を守ることで忙しい」と強調。カタールを拠点にするハニヤ氏がイランで殺害されたことは、どこにいても暗殺されるリスクがあることを意味すると説明し、「(暗殺を恐れるハマス幹部が)交渉でさらに妥協する可能性がある」と見通した。
◇紛争拡大の恐れ
一方、ハニヤ氏殺害を受け、イスラエルと敵対するイランや「抵抗の枢軸」と呼ばれる親イラン勢力の対応が焦点だ。イランの最高指導者ハメネイ師は「復讐(ふくしゅう)はイランの義務だ」と宣言し、報復を誓った。
イスラエルへのドローン攻撃などを行ってきたイエメンの武装組織フーシ派も「全てのレッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と反発。ヒズボラも全ての地域で「(抵抗の)決意を強めるだけだ」と述べた。
カーネギー中東センターのマイケル・ヤング氏は「非常に危険なエスカレーションだ」と懸念。親イラン勢力が連携してイスラエルに報復すれば、イスラエルとハマスの衝突が「中東地域での戦争に発展する恐れもある」と語った。
[時事通信社]
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