2024-07-23 16:17スポーツ

メダルへ賞金、論争に=世界陸連が創設―パリ五輪

陸上の世界室内選手権、女子400メートル決勝で室内世界新記録を樹立して優勝し、賞金の小切手を受け取るオランダのフェムケ・ボル(右)。左は世界陸連のセバスチャン・コー会長=3月2日、英国・グラスゴー(EPA時事)
陸上の世界室内選手権、女子400メートル決勝で室内世界新記録を樹立して優勝し、賞金の小切手を受け取るオランダのフェムケ・ボル(右)。左は世界陸連のセバスチャン・コー会長=3月2日、英国・グラスゴー(EPA時事)

 五輪メダリストへの賞金を巡り、論争が巻き起こっている。世界陸連はパリ五輪の陸上で金メダルを獲得した選手とチームに賞金5万ドル(約780万円)を贈る。国際競技団体(IF)として初の試みだが、一部のIFが反発。国際オリンピック委員会(IOC)も否定的な見解を示している。
 世界陸連が出す賞金総額は240万ドル(約3億7500万円)。資金はIOCから4年ごとに受け取る分配金から捻出する。2028年ロサンゼルス五輪では銀、銅を含む全メダリストに対象を拡大する予定だ。
 世界陸連のセバスチャン・コー会長は「五輪のメダル獲得に市場価値を見いだすことは不可能だが、五輪で選手が生み出した収益の一部を直接還元することが重要だ」と意義を強調した。
 夏季五輪国際競技連盟連合(ASOIF)は「オリンピズムの価値と大会の独自性を損なう。下位選手を軽視している」と懸念を表明した。五輪はかつて金銭的報酬を許さず、プロ選手を排除していた。選手は名誉を得るが、経済的利益を目的としない。「アマチュアリズム」の理念が五輪には根付いている。
 財政的に自立して余裕のあるIFでなければ、賞金は出せない。他のIFが反対するのは、競技間の格差が広がる懸念があるからだ。IOCは各国オリンピック委員会やスポンサーによる報酬は問題視せず、「IFの役割はできるだけ多くの人々がその競技に参加できるようにし、選手間の格差をなくすことだ」。競技の普及や発展に充てるべきだとの考えを示した。
 東京五輪の陸上金メダリストからは歓迎する声が多く聞かれる。ロイター通信によると、男子棒高跳びのアルマント・デュプランティス(スウェーデン)は「何もないよりいい。正しい方向への一歩」。男子砲丸投げのライアン・クラウザー(米国)は「世界選手権のメダリストでも、二つの仕事を掛け持ちしている」とトップ選手の実情を訴えた。(時事)
[時事通信社]

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