中東、ウクライナ情勢に不透明感=「力の空白」で対立激化も―米大統領選
【ワシントン時事】バイデン米大統領が撤退を表明したことで、国際情勢は不透明感を増しそうだ。中東情勢が緊迫し、ロシアのウクライナ侵攻が続く中、バイデン政権のレームダック(死に体)化に伴う米国の指導力低下で「力の空白」が生じ、対立が激化・再燃する恐れもある。
当面の焦点は、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ情勢だ。バイデン氏は5月末に戦闘休止とハマスが拘束する人質の解放などを柱とする停戦案を公表。一時は停滞した停戦交渉だったが、7月に入りハマス側が譲歩する形で進展への期待が高まっていた。
だが、ハマス壊滅を掲げるイスラエルのネタニヤフ首相が戦闘継続の姿勢を崩さず、交渉妥結は予断を許さない状況。ネタニヤフ政権に合意を迫ってきたバイデン氏の撤退表明に伴い、停戦機運がそがれる可能性がある。
また、長期的にはウクライナ侵攻への影響が懸念される。バイデン氏は侵攻を続けるロシアのプーチン大統領に「屈しない」と強調し、ウクライナを全面的に支援。4月には軍事支援継続に必要な追加予算を盛り込んだ法律を成立させ、昨年12月以降、滞っていた武器供与を再開させた。
ロシアは5月にウクライナ北東部ハリコフ州への攻勢を強めたが、米国の支援再開の結果、ウクライナ軍は態勢を立て直した。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は「全般的に前線は安定し、ウクライナ軍はより強固な要塞(ようさい)と防衛線を構築している」と強調する。
だが、11月の大統領選で勝利すれば、来年1月20日の就任を待たずに「(ウクライナでの)戦争に決着をつける」と豪語するトランプ前大統領は、暗殺未遂事件を経て勢いを増している。
ロシアが米大統領選を前に有利な状況を作り上げるため、攻勢を強める可能性も否定できない。トランプ氏が副大統領候補に対ウクライナ支援に反対するバンス上院議員を指名したこともウクライナや欧州諸国にとっては懸念材料だ。米国の指導者交代に各国は備えを迫られそうだ。
[時事通信社]
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