ウクライナ、腐敗撲滅に本腰=復興支援、EU加盟にらむ
【キーウ時事】ロシアによる侵攻が続くウクライナが、腐敗撲滅に本腰を入れている。政府や地方の高官が絡んだ汚職事件が次々と発覚。戦後復興をにらんだ民間投資や欧州連合(EU)加盟交渉に影を落としかねないだけに、摘発に当たる捜査機関の体制強化を進めている。
ウクライナでは昨年、国内の富豪から巨額の不明朗資金を受け取った疑いで最高裁長官が拘束されたほか、軍の食材調達を巡る不自然な契約が発覚し国防次官が解任された。今年4月には国有地の不正取得疑惑でソリスキー農業食料相が辞任に追い込まれるなど、汚職事件や疑惑が絶えない。汚職に絡む起訴は今年5月末時点で計52件、被害は約215億フリブナ(約840億円)に上る。
世界各国の汚職を監視する国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」の2023年のランキングによると、ウクライナの「清潔度」は180カ国・地域中104位。キーウ国際社会学研究所の世論調査では、ウクライナが抱える問題として回答者の63%が「汚職」を挙げ、ロシアとの戦争を除くと最も深刻な懸念になっていることが示された。
世界銀行の試算によれば、ロシア侵攻に伴うウクライナの復興需要は今後10年間で総額4860億ドル(約77兆円)。各国はインフラ投資や金融支援に意欲を示すものの、「はびこる汚職がリスクだ」(日本企業)との声は少なくない。
25日からのウクライナのEU加盟交渉では、汚職の温床とされる新興財閥(オリガルヒ)と公務員の癒着への対策なども話し合われる。ゼレンスキー大統領は19年の大統領選で腐敗撲滅を公約に掲げて当選しており、汚職対策は政権の最重要課題でもある。
ウクライナ政府は腐敗撲滅を加速させるため、摘発を担う捜査機関「国家汚職対策局(NABU)」の職員数を現在の約700人から3年かけて1000人規模に拡充。体制強化を図り、国際社会からの信頼確保を目指す考えだ。
[時事通信社]
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