地政学情勢悪化で核兵器近代化進む 国際平和研が警鐘
【ストックホルムAFP=時事】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は17日に発表した年鑑で、地政学的な情勢の悪化を背景に核保有国が核兵器の近代化を進めていると警告し、各国首脳に自制を求めた。≪写真は資料写真≫
世界で核兵器を保有しているとされるのは米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルの9か国。SIPRIはこれらの国について、「核兵器の近代化を続けている」と分析。
SIPRIによれば、今年1月時点で世界の核弾頭の総数は推定1万2121発だった。このうち推定9585発が使用可能な状態にあり、約2100発は弾道ミサイルに搭載され「高度警戒態勢」に置かれている。
全核兵器のほぼ90%をロシアと米国が保有しているが、中国も初めて複数の核弾頭を高度警戒態勢に置いたとみられている。
SIPRIの大量破壊兵器プログラムのディレクターを務めるウィルフレッド・ワン氏は、「国際情勢で核兵器がこれほど重要な役割を果たすようになったのは冷戦以来だ」と強調。
ダン・スミス所長は「私たちは今、人類史上最も危険とも言える時期にある」とし、大国に対して「足並みをそろえながら、冷静になって自制してもらいたい」と呼び掛けた。
SIPRIはまた、ウクライナおよびパレスチナ自治区ガザ地区での紛争をめぐり国際情勢が緊迫化する中、核軍備管理に向けた外交努力も大きく後退しているとした。
ロシアは昨年2月、米国との核軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行を停止した。
ウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻開始以降、核兵器の使用について繰り返し言及。今年2月の年次教書演説では核戦争に発展する「現実的な」リスクがあると警告し、5月には非戦略核兵器(戦術核兵器)の使用を想定した演習の実施を指示した。
一方、米国とイランは昨年6月、核をめぐり非公式に合意したが、イスラエルとイスラム組織ハマスが10月に武力衝突して以降、白紙に戻されたとSIPRIは指摘している。【翻訳編集AFPBBNews】
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