2024-06-14 20:48World eye

コククジラ、温暖化で急速に小型化 体長13%縮小 研究

【ワシントンAFP=時事】太平洋沿岸のコククジラの体長が2000年以降、13%縮小しているとの研究結果が専門誌「グローバル・チェンジ・バイオロジー」に発表された。気候変動やその他の人的活動が、海洋哺乳類の小型化を招いていることを示すさらなる証拠だと研究は指摘している。≪写真は、メキシコ北東部バハカリフォルニア州ロスカボスの太平洋岸で撮影されたコククジラ≫
 研究チームは北太平洋東部(ENP)に生息するコククジラの個体群約1万4500頭のうちの約200頭に注目した。
 北極の寒冷で深い海域に生息する個体群とは異なり、ENPの個体群は沿岸近くの浅く暖かい水域で餌を食べる。これまでの研究では体、頭、尾がより小さいことが示されており、他の個体群よりも状態が悪いと考えられている。
 論文の共同執筆者を務めた米オレゴン州立大学のケビン・ビアリッヒ助教は13日、AFPの取材に対し「過去20~40年の間に体長が短くなったことが分かっている。個体数減少の危険性を示す初期兆候かもしれない」と懸念を語った。
 年齢が推定できる、または判明している130頭を対象に、16年から22年にかけてドローンで撮影・分析した結果、2020年生まれのコククジラは、2000年生まれの個体に比べて成体時の体長が平均で約1.65メートル短いという傾向が見られた。約13%の小型化だ。
 特筆すべきは、雄よりも雌の方が小型化が顕著なことだった。雌の体長は従来、雄を上回るとされてきたが、現在では同程度だという。
 ■動物にとって大きさは重要
 論文の主執筆者で英セントアンドルーズ大学のエンリコ・ピロッタ氏は「一般的に、動物にとって大きさは重要だ」と説明する。大きさは「行動的、生理的、生活史的な影響を及ぼし、個体が属する生態系にも連鎖的な影響を及ぼす」とした。
 体の小さな個体の場合、子どものクジラでは断乳後の生存率が低くなる可能性があり、また成体では繁殖成功率への影響が懸念されるという。
 重要なのは、こうした小型化傾向が、海洋の「湧昇」サイクルのバランスの変化と相関していることだ。
 海水が深層から表層近くへ湧き上る湧昇では、栄養塩も深海から浅海に運ばれる。湧昇流の緩和期に運ばれた養分は浅い海域にとどまり、そこでクジラが餌とするプランクトンなどの微小生物が光合成によって成長する。
 しかし、気候変動は風のパターンや水温の変化を通じて、この微妙なバランスに影響を与える要因であることが知られている。
 クジラが小型化すれば、成長や繁殖に影響があるだけでなく、ボートとの衝突や漁具への絡まりなど、致命的な脅威に対する脆弱(ぜいじゃく)性も増す可能性がある。【翻訳編集AFPBBNews】

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