米追加支援に期待大=苦戦続くウクライナ
米政府が追加軍事支援を行うウクライナは、ロシアの侵攻に対して苦戦が続いていた。ロシア国防省は21日、東部ドネツク州の要衝チャソフヤルに近い集落を掌握したと発表。チャソフヤルが陥落すれば、ロシアが州全域を占領するシナリオが現実味を帯びる。ウクライナのゼレンスキー政権の危機感は強く、支援による戦局打開への期待は大きい。
チャソフヤルは、2014年にロシアが軍事介入した東部紛争を受け、標高約250メートルの高台にウクライナ軍が陣地を築いた町。昨年5月にロシアの民間軍事会社ワグネルが激戦の末に制圧したバフムトの約10キロ西方に位置する。
さらに北西にゼレンスキー政権がドネツク州の臨時州都とするクラマトルスクが控え、ウクライナ軍はバフムトを失った後もチャソフヤル防衛を重視してきた。しかし、防空兵器などが枯渇する中、空爆を併用するロシアに前線の主導権を奪われつつあった。
ロシアは今回、チャソフヤルの北東隣のボグダノフカを制圧。3月下旬には南東隣の集落イワノフスコエを掌握しており、要衝攻略に向けて二つの侵攻ルートを確保した形だ。しかし、いずれも標高はチャソフヤルより約100メートル低く、「高地はウクライナ軍が維持している」(ロシア軍系メディア)ため、占領は容易でないとみられている。
ウクライナ軍のシルスキー総司令官は最近、ロシアが対ドイツ戦勝記念日の5月9日までに「チャソフヤル占領を目指している」と警戒。米シンクタンク戦争研究所は今月中旬、防空兵器などが不足する現状に鑑みれば、陥落は近いと悲観的な見方を示した。軍事支援が前線に行き届くには一定の時間を要するもようで、ロシアに大規模攻勢の形で先手を打たれる可能性もある。
[時事通信社]
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