韓国総選挙、対日争点ならず=世論、経済や物価に関心
【ソウル時事】10日投開票の韓国総選挙で、対日外交は主要な争点にならなかった。物価高などで日々の生活にきゅうきゅうとする中、世論の関心は外交よりも生活に直結した課題に向いた。日本に厳しい姿勢の李在明代表が率いる最大野党「共に民主党」も選挙戦では対日政策に重点を置かなかった。
尹錫悦政権は、日韓の最大の懸案だった元徴用工訴訟問題を巡り、昨年3月に日本企業の賠償金を韓国政府傘下の財団が肩代わりする解決策を発表。文在寅政権下で悪化した対日関係を正常化し、それをテコに日米韓3カ国の連携も強化した。
尹氏の支持率は3割台と低迷しているが、不支持の最大の理由は経済の停滞や物価高。先月は農作物価格が前年同月比20.5%上昇し、リンゴや梨の価格は8割上がった。
世論の反発を気にして与党側が日韓関係改善を成果として取り上げなかっただけでなく、野党側も政権の経済対策への批判に集中。共に民主党の李氏は遊説で「今回の総選挙は新韓日戦だ」と、尹政権の対日姿勢を非難しつつも、「物価も金利も家賃も高く、生活がとても大変だ。尹政権で経済が崩壊した」といった訴えが中心だった。
一般的に外交は選挙の争点になりにくい上、徴用工問題の解決策発表から1年以上が経過し、有権者の記憶が薄れている。さらに昨年来、訪日観光客が爆発的に増加。若年層の対日観は中高年とは異なると言われ、「反日」ムードをあおっても、過去のようには受け入れられないという判断もあったとみられる。
韓国政府関係者は「尹大統領の対日関係改善の信念は揺るがない」と語る。選挙結果にかかわらず、外交方針が変わる可能性は低いとの見方が大勢だ。峨山政策研究院の崔恩美研究委員は取材に「政権の外交政策の考え方は強固だ。尹政権が掲げる(国際社会で一定の役割を果たす)『グローバル中枢国家』の基盤には日本との関係があるため、選挙後も変わらない」と指摘した。
ただ、崔氏は、政権の「体力」が弱まれば、外交方針は不変でも、韓国内の反発が根強い日本との安全保障協力などの推進力が衰えかねないと分析している。
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