北朝鮮パネル、事実上廃止へ=延長決議案にロシア拒否権―制裁監視体制の弱体化必至・国連安保理
【ニューヨーク時事】国連安全保障理事会による対北朝鮮制裁決議の履行状況を調べる専門家パネル(定員8人)が、事実上廃止される見通しとなった。安保理で28日に行われた任期1年延長決議案の採決で、北朝鮮と軍事協力を深めるロシアが拒否権を行使。現在の任期が切れる4月末以降、制裁監視体制の弱体化は必至だ。
採決では全15理事国のうち日米韓など13カ国が賛成し、ロシアと同様に北朝鮮を擁護する中国は棄権した。ロシアのネベンジャ国連大使は「西側諸国による北朝鮮を締め上げる政策」だとして、制裁自体の緩和を主張。要求が決議案に反映されなかったことを理由に、拒否権を発動した。
活動継続には任期更新の新たな決議を採択する必要があるが、安保理筋によると、ロシアが翻意する可能性は低いという。
パネルは2009年に採択された決議に基づき、安保理の下部組織で理事国の外交官から成る「北朝鮮制裁委員会」の機能強化のために設置された。各国への照会や現地調査を通じて情報を集め、制裁違反の事例を調査。年2回まとめられる報告書の勧告に基づき、安保理や各国が違反した個人・団体に新たな制裁を科すことがある。
北朝鮮との武器取引は決議で禁じられている。だが、ロシアは侵攻するウクライナで、北朝鮮から調達した軍需品を使用しているとされ、パネルはこの問題の調査に着手していた。ウッドワード英国連大使は会合で「制裁不履行を暴くこのパネルが、ロシアにとって不都合なものになったのだ」と指摘した。
各理事国からは、パネルが廃止されれば「北朝鮮による制裁逃れが歯止めなく拡大し続ける」(マルタ)などと、懸念や遺憾の声が相次いだ。山崎和之国連大使は「無責任で恥ずべきことだ」とロシアを糾弾。日米英仏韓の5カ国は決議案否決後、共同声明で「責任ある国連加盟国の行動ではない」と拒否権行使を非難した。
[時事通信社]
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