綱渡りの中東自衛隊派遣 3密職場、医療施設確保課題―海賊対処の交代艦出港
新型コロナウイルスが世界各地で猛威を振るう中、中東イエメンとアフリカ・ソマリアに面したアデン湾での海賊対処活動で、交代する海上自衛隊の護衛艦「おおなみ」(乗組員約200人)が26日、横須賀基地(神奈川県横須賀市)を出港した。
新型コロナは中東やアフリカでも感染が拡大。閉鎖空間の艦内は、密閉、密集、密接の「3密」の典型的な職場で、状況によっては撤収も選択肢になり得る綱渡りの派遣が続く。
出港に先立ち、糟井裕之・自衛艦隊司令官は「任務遂行のため、細心の注意をもって感染防止に取り組むことが極めて重要」などと訓示した。家族の見送りも行われなかった。
「おおなみ」の派遣期間は約半年で、政府関係者によると、感染防止のためマスク約4000枚を用意。必要に応じてさらに補給する。海賊対処とは別に、オマーン湾などでシーレーン(海上交通路)の情報を収集中の護衛艦「たかなみ」にもマスク約2500枚が追加されたという。
派遣中の護衛艦は2週間に1度程度、寄港して補給を行うが、拠点のあるジブチは新型コロナによる影響で入国制限を実施。寄港先の沿岸国を含め乗組員は休養のための市中上陸ができない状態だ。
護衛艦勤務経験者は「2~3段ベッドで寝起きする狭い艦内の生活で、上陸は最大の楽しみ。1カ月以上も上陸できないのは相当ストレスがたまる」と話す。
陽性の疑いの隊員が出れば、医務室に隔離される。「おおなみ」の場合、症状によっては艦載ヘリコプター(京都府・舞鶴基地所属)で沿岸の医療施設に搬送される。
防衛省幹部は「万が一に備え、友好国の医療施設が受け入れ可能なのか確認している」と説明。現地の医療体制が逼迫(ひっぱく)し、受け入れが困難になれば、活動継続は難しくなる。
一方で、ソマリアなどの沿岸国では新型コロナの影響による貧困から再び海賊の活動が活発化し、商船護衛のニーズが増す可能性もある。イランと米国の対立も再び深まり、海域は緊迫化しつつある。
河野太郎防衛相は記者会見で、「万が一、感染者が発生した場合にどうするかさまざまなシミュレーションを行っている。情勢を見ながら判断しなければならない」としている。
5月には「たかなみ」の交代艦も佐世保基地(長崎県)から出港する。(2020/04/27-07:06)
MSDF Destroyer Leaves for Middle East amid Virus Concerns
A Japanese Maritime Self-Defense Force destroyer left the Yokosuka base in Kanagawa Prefecture, south of Tokyo, for an antipiracy mission off the Middle East and Africa.
The destroyer Onami, with a crew of about 200, departed amid mounting concerns about the novel coronavirus, which is raging around the world including the two regions.
The Onami may have to withdraw from the mission if an outbreak occurs on the ship, which has all of what the government calls the three Cs that must be avoided--closed spaces, crowded spaces and close-contact settings.
"It's extremely important to prevent infection with maximum care in order to accomplish our duty," Vice Adm. Hiroyuki Kasui, commander in chief of the Self-Defense Fleet, told the crew before the departure.
The Onami will operate in the Gulf of Aden, which sits between Yemen and Somalia. It will be dispatched for about six months.
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