被災地から宇宙へ「一緒に前に」　新興企業、気球でロケット打ち上げ―来年度中の到達目標・福島県南相馬市

　東日本大震災による津波で大きな被害を受けた福島県南相馬市で、新興企業「ＡｓｔｒｏＸ（アストロエックス）」が気球を使って空中からロケットを打ち上げる計画を進めている。１１月に実施した地上での実証実験は成功し、２０２５年度中の宇宙空間到達を目指す。住民らの期待も大きく、小田翔武社長（３２）は「地元の人と一緒に前に進む」と意気込む。
　小田社長は県外出身で南相馬市と縁はなかったが、東側が海に面するなどロケットの打ち上げに適し、付近を飛行機や船が通る頻度が少ない同市の特性に着目。復興関連の補助金を含む行政の手厚い支援体制にも魅力を感じ、２２年に同市で創業した。
　千葉工業大（千葉県習志野市）と共同で小型ロケットの研究開発に取り組み、打ち上げには気球につり下げたロケットを地上から約２０キロの成層圏で発射する「ロックーン方式」を採用した。同社によると、同方式は打ち上げが天候に左右されにくく、空気抵抗も少ないため、地上よりも少ないエネルギーで発射できるなどの利点がある。大規模な地上設備も不要のため、コストも地上に比べ３分の１程度に抑えられるという。
　ただ、同方式は打ち上げ時、つり下げたロケットの姿勢を安定させる手法が確立していない。同社は実用化に向け、宇宙航空研究開発機構（ＪＡＸＡ）とともに姿勢制御装置の開発を進める。２５年度にロケットを国際的に宇宙と定義される高度１００キロに到達させ、２８年度にはロケットで小型衛星を衛星軌道に投入し、事業化させる目標だ。
　１１月９日未明、南相馬市の海岸近くの空き地で行われた発射実証実験では、実用化を見据えて製作した全長６．３メートル、重量１６２キロの小型ロケットを地上から打ち上げた。ロケットは勢いよく上昇し、高度約７キロまで到達した後、福島県沖に着水し成功。小田社長は「多くの方の応援のおかげで一歩進むことができた。これからも南相馬で開発を続けたい」と喜んだ。
　実験の見学場所には約４００人が集まった。同県二本松市から家族で訪れた男性は「音や煙などに迫力があって興奮した。これをきっかけに地域全体で宇宙開発が盛んになってほしい」と期待を寄せた。宮城県山元町から親子で訪れた団体職員の佐藤作智栄さん（５１）は「津波で大きな被害を受けたのは山元町も同じ。被災地で頑張る企業は応援したい」と話した。（2024/12/22-07:04）

In Minamisoma, a city in Fukushima Prefecture that was hit hard by tsunami in 2011, a local space startup is aiming to launch a rocket from a flying balloon in fiscal 2025, which starts next April.
   "We will move forward together with local people," Shobu Oda, CEO of the Japanese startup, AstroX Inc., said after the company successfully conducted a ground test of a small rocket in November.
   Oda, who had previously had no connection with Minamisoma, founded the company in 2022, choosing the city because the east side faces the sea, which is suitable for launching rockets, and planes and ships pass nearby less frequently.
   He was also attracted by generous public support, including subsidies for reconstruction from the 2011 disaster.
   In collaboration with the Chiba Institute of Technology in the city of Narashino near Tokyo, AstroX is working on the development of a small rocket that will be launched from a balloon about 20 kilometers from the ground.