「日ベトナムの懸け橋に」　娘の夢継ぎ、温泉宿開業―福島に移住の父・千葉女児殺害

　千葉県松戸市で２０１７年３月に殺害されたベトナム国籍の小学３年生、レェ・ティ・ニャット・リンさん＝当時（９）＝の父親がこのほど、福島県二本松市で温泉旅館を開業した。「日本とベトナムの懸け橋になりたい」という娘の夢をかなえようと日本に残った一家は、「再生」に向け移住先で新たなスタートを切った。
　リンさんは１７年３月、通っていた小学校の保護者会長だった男＝無期懲役が確定＝に殺害された。父レェ・アイン・ハオさん（４２）は、「恐怖で家から出られない日が続いた」と当時を振り返る。母国に帰る選択肢も頭をよぎったが、「日本の友達にベトナム料理を作ってあげたい」という娘の思いを継ぎ、２１年４月に松戸市内でベトナム料理店をオープンさせた。
　ただ、コロナ禍の影響で売り上げは伸び悩んだ。そうした中、二本松市の岳（だけ）温泉にあった廃業旅館が売りに出されていると知り、「温泉がほとんどないベトナムや海外の人に、楽しんでもらえるはず」と購入を決断。一家で新天地に移った。
　まず料理店を旅館の一角に移転させ、昨年６月に先行開業。本格的なベトナム料理を提供する傍らで、老朽化した設備の修復や行政手続きなど旅館の開業準備を進めた。
　訪日客を意識して、板張りだった床や畳にはカーペットを敷いて館内を土足で歩けるようにしたほか、計２０ある客室のほぼ全てにベッドを置いた。自慢の露天風呂は「気持ちが明るくなる空間に」と内装の色使いまで考えてリフォームした。
　旅館の屋号は、再生や回復を意味する「ＲＥＢＩＲＴＨ」にちなみ「ＲＢホテル」とした。「リンちゃんに戻ってきてもらいたい」「事件で失った人生をやり直したい」、「お客さんの心身が安らぐ場所にしたい」との思いを込めた。ハオさんは「苦労も多かったが、娘の夢に近づくことができた。ここが日本人とベトナム人双方の憩いの場になれば」と話す。（2024/09/21-13:36）

The father of a murdered Vietnamese girl has opened a Japanese-style hot spring inn in Nihonmatsu, Fukushima Prefecture, to realize her dream of connecting Japan and Vietnam.
   Le Thi Nhat Linh was killed when she was 9 by the then head of the association of parents and teachers at her elementary school in Matsudo, Chiba Prefecture, east of Tokyo, in March 2017.
   Her father, Le Anh Hao, 42, looked back at the time and said he could not get out of his house for a while because he was scared.
   He thought about going back to his home country, but he opened a Vietnamese restaurant in April 2021 as the daughter hoped to cook Vietnamese dishes for her friends in Japan.
   But the restaurant fared poorly, affected by the COVID-19 pandemic. Then, he learned that the building of a closed inn was on sale in the northeastern city of Nihonmatsu.