処理水放出、長い道のり　開始１年、異常見られず―完了まで３０年・東電福島第１原発

　東京電力福島第１原発にたまった処理水の海洋放出開始から２４日で１年。東京電力ホールディングスはこれまで約６万トンを放出し、周辺海域で異常は確認されていない。ただ、敷地内のタンクには１５日時点で約１３１万トンが残り、完了には３０年程度かかる見通し。並行する廃炉作業とともに、道のりは長い。
　処理水は、２０１１年の原発事故で溶け落ちた核燃料（デブリ）の冷却などで生じた汚染水から、トリチウム以外の放射性物質を取り除いたもの。トリチウムを国の安全基準の４０分の１（１リットル当たり１５００ベクレル）未満になるよう海水で薄め、現在８回目の放出を実施している。
　放出を決めたのは、廃炉用設備などのスペース確保に向け、林立するタンクを解体する必要があるためだ。処理水は現在、タンクの総容量の９５％を占めている。
　これに対し、中国は直後から日本産水産物の全面禁輸に踏み切った。懸念された国内での風評被害は限定的だったが、主要な輸出先を失った漁業者らは大きな打撃を受けた。東電は現時点で漁業者らへの賠償額を７５３億円と見積もる。
　国際原子力機関（ＩＡＥＡ）は放出後に２回の現地調査を行い、いずれも「国際安全基準に合致している」との見解を示した。政府や東電は、周辺海域のトリチウム濃度などが基準を下回っているとして、国内外に安全性を訴えるが、中国は全面禁輸を継続する。
　原発事故全体の賠償額なども拡大している。現時点で支払額は１１兆円超、合計で１５兆４０００億円に達する見通しで、８兆円の廃炉費用を含めると総額２３兆円を超える。
　東電はこうした費用を捻出するため、柏崎刈羽原発（新潟県）の再稼働を急ぐ構えだが、地元同意のハードルは高い。２２日には福島第１原発のデブリを取り出す初めての試験作業を手順ミスで中断。トラブルや不手際が相次ぐ中、未曽有の原発事故処理の行方は今も不透明なままだ。（2024/08/24-13:32）

Japan on Saturday marked a year since it started to release tritium-containing treated water into the sea from Tokyo Electric Power Company Holdings Inc.'s Fukushima No. 1 nuclear power plant, with the country still facing a long road ahead in completing the discharge project.
   While a total of around 60,000 tons of treated water has been discharged from the northeastern Japan plant that was devastated by the March 2011 powerful earthquake and tsunami, there have been no issues in tritium levels reported in nearby waters so far.
   With some 1.31 million tons of treated water still stored at the power plant in Fukushima Prefecture, the water discharge process is expected to take 30 years or so to complete.
   Before being discharged, the treated water, or wastewater from which radioactive substances other than tritium have been removed, is diluted with seawater so that the tritium concentration is below the safety limit of 1,500 becquerels per liter. The country is currently discharging its eighth batch of treated water.
   Responding to Japan's start of the water discharge on Aug. 24, 2023, China imposed a blanket ban on imports of Japanese fishery products.