アンコール遺跡保存に３０年　上智大の石沢教授「人材育成にめど」―カンボジア

　上智大の石沢良昭教授（８６）＝北海道帯広市出身＝は約３０年間、カンボジア北西部シエムレアプにある世界遺産アンコール遺跡群の保存に尽力してきた。２０２３年１１月、現地で時事通信のインタビューに応じ、「遺跡を修復するカンボジア人の人材育成にめどが立ち、安心している」と語った。
　石沢氏は同月、日本政府や上智大が支援したアンコールワットの西参道修復工事の完成式典に出席した。シハモニ国王はあいさつで石沢氏に言及し、「重要な支援に感謝したい」と述べた。
　石沢氏は１９６０年代、上智大でフランス語を専攻していた縁でかつて仏保護領だったカンボジアを訪れ、遺跡に魅了された。「約８００年前にこれほど大きな石造寺院が建造されたことに感動した。当時の技術や建立理由を解明して未来に残すことを決意した」という。
　ただ、カンボジアでは７０年に激しい内戦が勃発。６０年代は約４０人いた遺跡の保護に当たる「保存官」は、ポル・ポト政権下で知識人と見なされ殺害されるなどし、石沢氏が８０年に訪問した際は３人しか生存を確認できなかった。
　石沢氏を中心に上智大は９１年、「カンボジア人によるカンボジアのための遺跡修復」を掲げ、保存官の育成活動を始めた。「内戦で傷ついた民族の誇りを取り戻す手伝いをしたいと考えた」といい、９６年には現地に教育施設を設立した。
　同年からアンコールワットの西参道の修復工事が始まり、現地の保存官らは日本の専門家と共同で作業を行い経験を積んだ。石沢氏は「３０年以上かかったが育成にめどが立った。ただ、今後も協力は続ける」と話した。（2023/12/31-08:14）

Japanese professor Yoshiaki Ishizawa, 86, remains eager to continue his support for the conservation of the Angkor Wat ancient temple complex in Cambodia after working on the project for three decades.
   "I feel relieved that we have paved the way for training of Cambodians to restore the site," Ishizawa of Sophia University said in an interview with Jiji Press in November 2023 in Cambodia's Siem Reap, where the UNESCO World Heritage site is located.
   That month, Ishizawa attended a completion ceremony for the restoration of Angkor Wat's western causeway, which was supported by the Japanese government and the university.
   Cambodia's King Norodom Sihamoni referred to Ishizawa in his address and expressed his gratitude for the professor's important support.
   Ishizawa, who majored in French at the Japanese private university, was fascinated by Angkor Wat when he visited Cambodia, formerly a French protectorate, in the 1960s.