「専守防衛」形骸化の恐れ 反撃能力、日本も保有―脅威増大、世論の変化反映
自民、公明両党が、敵の領域内でミサイル基地などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有を了承した。憲法上、打撃力は問題ないが、政策判断として保持しないとしてきた戦後日本の防衛方針の大転換。日本を取り巻く安全保障環境の悪化を踏まえて、防衛力強化を支持する世論の変化も後押しとなったが、「専守防衛」の形骸化は否めない。
◇ミサイル防衛では対処困難
「どんどん進化するミサイル技術にしっかり対応する防衛力が用意されているか。本当の意味で国民の命や暮らしを守ることができるか考えなければいけない」。岸田文雄首相は2日の参院予算委員会で、周辺国のミサイル技術の進展に警戒感を示した。
政府・与党が反撃能力保有に踏み切るのは、北朝鮮の核・ミサイル開発に対応するには、従来の「弾道ミサイル防衛」(MD)のみでは限界があると判断したためだ。北朝鮮が近年、発射実験を繰り返す変則軌道の弾道ミサイルは、MDでの対応は困難とされる。このため、政府は米国製巡航ミサイル「トマホーク」の導入を検討している。
また、政府は明言こそしないものの、東・南シナ海への進出を加速させる中国の覇権主義的な行動が念頭にあるのも間違いない。
これまで、政府は憲法9条に基づき「武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使し、その態様も必要最小限にとどめる」などとする「専守防衛」の下で、もっぱらMDの強化に尽力してきた。
ただ、2020年6月に陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画が断念に追い込まれると、当時の安倍政権は急速に反撃能力保有に向けた検討を進めた。
今回の与党協議で、政府は反撃能力を保有しても「専守防衛」は堅持するとの立場を重ねて強調した。防衛省幹部も「反撃能力は武力攻撃を受けて、自衛隊が使えるメニューを増やすことだ」と解説する。
しかし、相手側の攻撃着手の判断を誤り、反撃能力を行使すれば、国際法が禁じる「先制攻撃」となる。移動式発射台(TEL)や潜水艦など発射方式は多様化しており、正確な着手認定は容易ではない。
政府は反撃対象についても「個別、具体的な状況に照らして判断する」としており、事実上制限はない。状況次第では指揮統制機能といった国家中枢も対象になり得ることから、実力行使は「必要最小限度」とする政府方針が、なし崩しになる懸念がある。
◇公明も現実的対応
「平和の党」を掲げる公明党は、これまで安保分野では前のめりになる自民党を抑える「ブレーキ役」を担ってきたが、今回は現実的対応を優先させた。公明党は当初、日本に対する武力攻撃への着手認定の厳格化や反撃対象の絞り込みを主張。政府・自民党が「手の内をさらすことになる」と難色を示すと、公明党は反撃能力の行使について「あくまで自衛権の枠内」と政府に確認させることで、政府方針を受け入れた。
こうした公明党の対応には、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射やロシアによるウクライナ侵攻を受けて、防衛力強化を求める国民世論の変化が影響した。公明党幹部は「時代の変化に伴い、支持者の考え方も変わってきている」と語った。(2022/12/02-19:16)
FOCUS: Japan Defense-Only Policy Feared to Become Dead Letter
The ruling coalition's agreement to allow Japan to possess counterstrike capabilities has raised concerns that the country's exclusively defense-oriented security policy will be a dead letter.
The agreement, reached Friday between the Liberal Democratic Party and Komeito, marks a major shift in post-World War II security policy.
The country previously took the position that it chose not to hold strike capabilities based on a political decision though their possession was permissible under the Constitution.
The ruling bloc made its move amid increased public support for boosting defense capabilities following a deterioration in the security environment around Japan.
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