2022.09.22 07:11Nation

大平外相、車中会談で決裂回避 周恩来氏が「誠意」評価―日中国交正常化交渉・中国側通訳が証言

 日中両国の国交正常化から29日で50年を迎える。事務方の綿密な下準備はなく、田中角栄首相(当時)が自ら北京に赴き、署名に向けた交渉が行われた。中国側で田中氏の発言に対する反発が広がる中、決裂を回避したのは大平正芳外相(同)が急きょ提案した車中の外相会談だった。現場に居合わせた中国側通訳の周斌氏(87)の証言を基に交渉を振り返る。
 田中、大平両氏らが訪中したのは1972年9月25日。周恩来首相(同)主催の夕食会は気まずい雰囲気のまま終了した。「(日中戦争で)迷惑を掛けた」との田中氏のあいさつを中国側が問題視したためだ。「『迷惑』は軽い発言だ」との批判がわき起こり、翌日の首脳会談で、周首相は中国側の不満を伝えた。
 訪中3日目を迎えたが、険悪なムードが漂い、交渉は難航した。事態打開に動いたのは大平氏だった。予定されていた万里の長城視察に向かう際、大平氏は姫鵬飛外相に車中会談を提案。移動の段取りを変更し、姫氏と同じ車に乗り込んだ。
 「私たち2人はこれまで、国のため、国民のために多くの問題について討議してきた。(国交正常化の)目的を必ず実現しないといけない」。周斌氏によると、大平氏は姫氏にこう語りかけた。
 さらに、旧大蔵省の官僚だった大平氏は戦時中、自身が中国へ派遣されていたと明かし、「日中戦争は侵略戦争だ」とする中国側の見解に「個人として同意する」と明言。田中首相も同様の認識を持っていると説明した。ただ、「今回は日本の外相として訪中している。完全にあなた方の見解を受け入れることはできない」と強調。その上で「私たちはより良い方法を探している。周首相に伝えてほしい」と訴えた。
 大平氏の切々とした思いは中国側を動かした。この会談がきっかけとなり「雰囲気が一気に変わった」(周斌氏)という。
 同日夜には再び外相会談が開催され、合意に向けた流れとなり、両首相は29日、日中共同声明に署名した。「大平さんは本当に誠意がある。彼を困らせてはいけない」。周斌氏によると、周首相は大平氏についてこう評価したという。(2022/09/22-07:11)

2022.09.22 07:11Nation

50 Years On: Talks in Car Led to Japan-China Normalization


Japan's normalization of its diplomatic relations with China 50 years ago was realized after suddenly decided talks between the two countries' foreign ministers inside a car turned around rocky negotiations.
   On Sept. 25, 1972, then Japanese Prime Minister Kakuei Tanaka and then Foreign Minister Masayoshi Ohira arrived at Beijing to hold negotiations to establish diplomatic relations despite a lack of working-level arrangements.
   A dinner party hosted by then Chinese Premier Zhou Enlai to welcome the two ended with awkwardness as the Chinese side was offended by Tanaka's remark that Japan had "caused trouble" to China through the Sino-Japanese war between 1937 and 1945, part of World War II.
   Criticism that the word "trouble" made light of the damage caused by the war grew on the Chinse side. The premier expressed China's discontent with the remark at a meeting with Tanaka on Sept. 26.
   The acrimonious mood remained the next day. Negotiations ran into stormy waters.

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