WTO改革、日本の役割に期待 米欧貿易摩擦に懸念―元米通商代表部高官
【ワシントン時事】元米通商代表部(USTR)高官のウェンディ・カトラー氏は27日までに時事通信のインタビューに応じた。2020年の通商問題について、機能不全に陥った世界貿易機関(WTO)の改革で「日本のような国がより積極的な役割を果たして主導すべきだ」と期待を表明した。また、トランプ米政権に端を発した貿易摩擦が、対中国だけでなく対欧州でも激化するとして、強い懸念を示した。
WTOをめぐっては、紛争処理の最終審に当たる上級委員会が米国の反対で機能不全に陥ったほか、中国を念頭に、自国の特定産業を優遇する補助金を取り締まるルールづくりなど懸案が多い。カトラー氏は、今年の20カ国・地域(G20)会議や環太平洋連携協定(TPP11)といった多国間交渉を主導した日本の功績を評価し、「米国を含めた国々を取りまとめることを望んでいる」と話した。
米中貿易協議は「第1段階」で正式合意に達したものの、中国の補助金問題や国有企業改革といった難題は「第2段階」に先送りした。今後の交渉について「すぐに結論を出すのは困難と思える」と予想し、来年11月の米大統領選後に持ち越される可能性を示唆。第2段階のテーマは日米欧の枠組みを超えた「多国間での解決策」も必要だと強く訴えた。
トランプ政権は日米、米中、北米の貿易交渉に一定の区切りを付けたが、大きな進展が見られない欧州連合(EU)との交渉が「最大の懸念要因」と指摘した。米欧間の課題として自動車貿易の不均衡、デジタル課税、自国の航空機メーカーに対する補助金紛争を挙げた上で「米国が自動車分野でEUに関税の脅しをかける可能性は十分にある」と警告した。
◇ウェンディ・カトラー氏略歴
ウェンディ・カトラー氏 元米通商代表部(USTR)次席代表代行。1983年に米商務省、88年にUSTR入り。米国が離脱する前の環太平洋連携協定(TPP)で対日交渉を担当した。2015年11月から米シンクタンク「アジア・ソサエティー政策研究所」の副所長。(2019/12/28-07:28)
INTERVIEW: Ex-USTR Official Calls on Japan to Lead WTO Reform
Wendy Cutler, former acting deputy U.S. trade representative under then President Barack Obama, called on Japan to lead the reform of the World Trade Organization, in a recent interview with Jiji Press.
Cutler, currently vice president of the Asia Society Policy Institute, said the United States under President Donald Trump is "no longer leading" on many issues including WTO reform.
"Countries like Japan should be playing a much more active role in the WTO, and lead reform efforts," she said.
Japan took the reins of the Trans-Pacific Partnership trade agreement and led a successful Group of 20 summit in Osaka in June, Cutler said.
The 11-country TPP was concluded after Trump withdrew his country from the previous deal soon after his inauguration in January 2017.
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