「諜報力不足」「外交的失敗」　交渉仲介役の元大使ら―ペルー公邸占拠事件２５年

　南米ペルーの日本大使公邸占拠事件は近く解決から２５年を迎える。当時ペルー側との交渉に当たった駐メキシコ大使と人質になった大使館職員が取材に応じ、「諜報（ちょうほう）力が不足していた」などと事件を振り返った。
　事件は１９９６年１２月１７日夜に発生。公邸が左翼ゲリラ「トゥパク・アマル革命運動（ＭＲＴＡ）」に占拠され、一時６００人以上が人質となった。日本政府は対話による「平和的解決」を目指したが、ペルーのフジモリ大統領（当時）は武力突入を準備していた。
　その後、ペルー政府とＭＲＴＡの交渉を仲介する「保証人委員会」が設置され、フジモリ氏とのパイプがあった駐メキシコ大使（同）の寺田輝介さん（８３）が９７年２月からオブザーバーとして参加した。
　当初ＭＲＴＡは収監中の最高幹部らの釈放を求め、交渉は難航。寺田さんらの説得が功を奏し、リーダーの男は妻の釈放に要求を変えたが、フジモリ氏は譲らなかった。同年４月２２日にペルー軍特殊部隊が公邸に突入、人質７１人を救出した。
　治外法権が認められている在外公館敷地内での作戦について、日本側への事前通告はなかった。人質となった元在ペルー日本大使館一等書記官の小倉英敬さん（７１）は「日本の立場は軽視され、外交的な失敗だった。緊急避難として片付けられる問題ではなかった」と訴える。
　突入作戦ではＭＲＴＡのメンバー１４人全員が死亡し、人質１人と特殊部隊員２人が犠牲となった。小倉さんは公邸から脱出する際、メンバー３人が生きたまま拘束されているのを目撃したという。男の１人は後ろ手に縛られ、地面に転がされていた。「彼らは処刑されたのではないか」。２５年たった今も疑念が拭い切れない。
　事件の背景について、寺田さんは「冷戦後、中南米で米国の影響力が低下する中、各国でゲリラ活動が展開された。こうした動きに応じて日本政府が対外インテリジェンス（諜報）力を伸ばせなかった結果ではないか」と指摘。ゲリラなどの動きを未然に察知することが重要だとし、「今でもアフリカなど場所によっては起こり得る」と警鐘を鳴らした。（2022/04/21-13:31）

A quarter century after a hostage crisis at the Japanese ambassador's official residence in Peru was ended by a raid by Peruvian special forces, former Japanese diplomats who were involved say the monthslong incident highlighted Japan's lack of intelligence capability and diplomatic failures.
   On the night of Dec. 17, 1996, members of the leftist guerilla group Tupac Amaru Revolutionary Movement (MRTA) stormed the residence, taking hostage people who were there to celebrate the birthday of then Japanese Emperor Akihito.
   The group held more than 600 hostages at one point but many were released in stages.
   The Japanese government was seeking a peaceful solution through dialogue, but then Peruvian President Alberto Fujimori was preparing to send armed forces into the building.
   A commission of guarantors was later set up to mediate negotiations between the Peruvian government and the MRTA. Then Japanese Ambassador to Mexico Terusuke Terada, who had ties with Fujimori, took part as an observer in February 1997.