2022.03.02 07:06Nation

「核抑止」めぐる議論拡大 ウクライナ危機で急浮上―与野党

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、日本でも核抑止をめぐる積極的な議論を求める声が与野党に広がっている。他国の侵略行為には核の抑止力が有効との主張だが、日本は「非核三原則」を国是としており、議論が本格化するかは見通せない。
 自民党の元首相は2月27日に出演したテレビ番組で、米国の核兵器受け入れ国が使用に際して意思決定に加わる(核兵器の共有)について、「この世界はどのように安全が守られているのかという現実の議論をタブー視してはならない」と議論を促した。
 2006年に中川昭一政調会長(当時)が「核武装論」を容認する発言をして与野党から批判を浴びるなど、非核三原則を掲げる日本では、核保有の議論が主要な政策課題となることはまずなかった。しかし近年、核保有国の中国が南・東シナ海で軍事的圧力を強め、同じく核を保有する北朝鮮も弾道ミサイル発射を繰り返している。
 総務会長は1日の記者会見で、「どんな議論も避けてはいけない」と強調。政調会長も同日の会見で「非核三原則の『持ち込ませず』の例外をつくるかどうか、議論を封じ込めるべきではない」と安倍氏に賛同した。野党からも「議論は当然。昭和の価値観のまま令和もいくのか」(日本維新の会の松井一郎代表)といった声が上がる。
 背景にあるのは、ウクライナ危機が突きつけた、核と安全保障の切り離せない関係だ。1991年の旧ソ連崩壊後、ウクライナは世界3位の核兵器保有国だったが、94年の核拡散防止条約(NPT)加盟に際し、核兵器をロシアに移管した。非核保有国となったことで核抑止が効かず、ロシアの侵攻を許したというわけだ。防衛省幹部は「核があればロシアの侵攻はなかった」と指摘する。
 一方、公明党の代表は1日の会見で、核共有について、「三つの原則、『持たず、つくらず、持ち込ませず』の姿勢は貫いていく」と反対を表明。立憲民主党の代表も「(核を)持つ、持ち込ませるという態度ではいけない」と反発した。首相は2月28日の参院予算委員会で、「非核三原則を堅持するわが国の立場から認められない」と明言した。
 現在、米国と核兵器を共有するのは北大西洋条約機構(NATO)のドイツなど5カ国。米国との合意に基づき共同で核兵器の運用・管理を行っている。防衛相経験者は「NATOのシステムをそのまま導入できるとは思っていない。本質は(米国の核の傘による)抑止力を高めることだ」と強調した。(2022/03/02-07:06)

2022.03.02 07:06Nation

FOCUS: Nuclear Deterrence Debate Eyed in Japan amid Ukraine Crisis


Prompted by the Russian invasion of Ukraine, Japanese politicians from both ruling and opposition blocs are increasingly calling for active debate on nuclear deterrence.
   Those in favor of such a debate argue that nuclear deterrence is effective against invasions by other nations.
   But it is uncertain whether full-fledged deliberations can be held, given Japan's "three nonnuclear principles" of not possessing or producing nuclear weapons and not allowing them on Japan's territory.
   In a television program Sunday, former Prime Minister Shinzo Abe of the ruling Liberal Democratic Party said that Japan should have a debate on a nuclear-sharing arrangement with the United States, saying, "Holding discussions on the reality about how the world's safety is protected should not be considered a taboo."
   The issue of holding nuclear weapons has almost never been seen as a major policy challenge for Japan. In 2006, former LDP policy chief Shoichi Nakagawa was criticized by both ruling and opposition sides for suggesting that there should be discussions about adopting nuclear arms.

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