企業業績、明るさ増す　鉄道、航空は回復鈍く―半導体不足や原油高に警戒感

　企業業績に明るさが増してきた。２０２１年９月中間決算では、海外経済の堅調を背景に電機や自動車が好調を維持。新型コロナウイルス感染拡大に伴う「巣ごもり消費」による世界的な荷動きの活発化で、海運大手は過去最高益を達成した。ただ、緊急事態宣言の発令で人出が抑えられ、航空や鉄道では回復の足取りが鈍い。半導体不足や原油高による原材料価格上昇への警戒感も強く、先行きは楽観できない。
　▽非製造業にも光明
　ＳＭＢＣ日興証券によると、東証１部の３月期決算企業（開示率４２．２％、６１５社）のうち、製造業の２１年９月中間連結純利益は前年同期比２．３倍、非製造業も２．４倍とともに急回復。製造業に比べコロナ禍からの回復に苦しんだ非製造業にも光明が差している。通期予想を上方修正する企業も多かった。コロナ前の１９年の同時期と比べても、製造業が２．７倍、非製造業は８４％増と回復基調は鮮明だ。
　日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手３社の９月中間連結純利益はいずれも過去最高。日本郵船は２２年３月期の連結純利益予想を最高益となる７１００億円に上方修正した。丸山徹執行役員は「想像もしなかった高水準の利益だ」と驚きを隠さない。
　電機・自動車大手は、景気回復が進む海外での需要を取り込み、快走を続ける。ソニーグループの９月中間連結決算は本業のもうけを示す営業利益が増益を確保し、２２年３月期には初めて１兆円の大台を超える見通し。トヨタ自動車は９月中間連結決算の売上高と営業利益、純利益がいずれも過去最高を記録した。
　一方、国内では夏にコロナ感染が急拡大し、緊急事態宣言などが発令され、航空や鉄道各社は苦戦を強いられた。ＡＮＡホールディングスは２２年３月期の純損益予想を３５億円の黒字から１０００億円の赤字に下方修正した。片野坂真哉社長は「（国内では）ワクチン接種が７割を超え、医療体制が充実してきている」と語り、下半期の回復に期待をかける。
　▽半導体不足、原料高を懸念
　ただ、先行きには暗雲が広がる。半導体不足は自動車メーカーの減産など企業活動に影響を及ぼしている。ホンダは２２年３月期の連結純利益が減益になるとの見通しを示した。
　供給網の混乱は半導体にとどまらない。「ベトナムに工場を持っていき過ぎた」。電子部品大手、日本電産の永守重信会長は悔やんだ。東南アジアで想定以上のコロナ禍に見舞われ、精密小型モーターなどの工場の操業が停滞した。ＳＭＢＣ日興の安田光株式ストラテジストは「製造業の回復は７～９月期に供給制約で勢いを弱めた」と分析する。
　原材料高の長期化も企業収益の圧迫につながる恐れがある。味の素の西井孝明社長は「今後も続くとみており、適切な値上げなどで対応したい」と語る。食品などの値上げは相次いでおり、消費抑制につながれば景気回復の動きは鈍くなり、企業業績にも影を落としかねない。
　◇主要企業９月中間決算の主な発言
▽ＪＲ東海・金子慎社長
　運輸利用の回復立ち上がりは１１月ごろ。来年１～３月には８割に戻るだろう
▽ＡＮＡホールディングス・片野坂真哉社長
　旅客需要の回復が遅れているが、ワクチン接種が広がっており、下期は追い風が吹く
▽日本郵船・丸山徹執行役員
　想像もしなかった高い利益水準。供給網が混乱しているが、何とか届けなければなら
　ない
▽パナソニック・梅田博和専務
　半導体不足は今年度いっぱい綱渡りになるが、今後は改善に向かう
▽トヨタ自動車・近健太取締役
　世界中で生産が停滞した。半導体不足のリスクは相当低くなっているが、ゼロとはい
　えない
▽ファナック・山口賢治社長
　半導体に限らず部品や素材などいろいろなものが足りていない。注文は多くいただく
　が生産が増やせない
▽日本電産・永守重信会長
　コロナ禍でベトナムの精密機械工場が停止し、操業率ががた落ちとなった。通期で挽
　回したい
▽味の素・西井孝明社長
　原料高は今後も続くが、適切な値上げなどで対応したい（2021/11/05-20:21）

Recent earnings reports by Japanese firms have indicated a spreading earning recovery among them, but little optimism is warranted amid concerns about persistent semiconductor shortages and rising crude oil prices.