2021.10.22 15:50Nation

「政治とカネ」、世代交代で苦心 議席獲得へ背水の公明―広島3区、東京12区【注目区を行く】

 「私の血の95%は自民党だ」。集会の出席者は驚いた。発言した候補が公明党の斉藤鉄夫だったからだ。なりふり構わず必死に訴える斉藤の表情には危機感があふれる。戦いの舞台は、2019年参院選をめぐる大規模買収事件で揺れた広島の3区だ。(敬称略)
 ◇事件の影響まだある
 同区では元法相河井克行が長年議席を維持してきた。しかし、河井は参院選に絡む公職選挙法違反の罪に問われ自民を離党。そこで公明は比例代表中国ブロックで当選を重ねる党副代表のベテラン、斉藤を押し込んだ。自民広島県連は猛反発。「野党が勝てば候補のいすは(自民に)戻る」。斉藤が与党統一候補に決まっても、自民に協力する空気は乏しかった。
 さらに、河井の妻案里=自民離党=の当選無効に伴う4月の参院広島選挙区再選挙は自民が敗北。斉藤を取り巻く状況は悪化するばかりだった。
 雰囲気が一変したのは9月の自民総裁選で地元広島選出の岸田文雄が勝利し、今月4日に首相に選出されてからだ。斉藤が岸田内閣の国土交通相に就いたことも大きい。
 地元政界に強い影響力を持つ県議会議長の自民中本隆志は「岸田政権の国交相を落とす理由はない」と号令をかけ始めた。首長や県連関係者の支援が加速。岸田も応援に駆け付けた。
 公明支持票だけでは当選ラインに届かない斉藤にとって、いかに与党としての一体感を高められるかが勝負の鍵を握る。斉藤が「私の血の95%は自民党」とアピールしたのは15日に開かれた自民の集会だった。高校時代に創価学会に入り、自民村議だった父から猛反対された過去も明かした。
 公明の小選挙区候補は比例と重複しておらず、負ければそこまで。斉藤陣営は「まだ事件の影響はある。厳しい戦いだ。僅差の勝負になる」と気を引き締める。
 立憲民主党は共産党と候補を一本化し、新人のライアン真由美を擁立、「クリーンな政治」を掲げ再選挙に続く連勝を狙う。現地入りした立民代表枝野幸男は21日、「広島出身の総理が出ても事件の反省はない。政治を変えよう」と政権交代を呼び掛けた。
 ◇「太田党」継承
 約20年にわたり、公明前代表太田昭宏が「太田党」と評される地盤を築き上げてきた東京12区。公明は後継に幹部候補の岡本三成を立てたが、候補を長年出せない自民からは不協和音も聞こえ、世代交代は容易でない。
 「力を貸してください」。20日、東京・JR大塚駅前で絶叫する岡本の姿があった。09年から毎回出馬している野党統一候補、共産池内沙織に対し、小選挙区初挑戦の岡本は知名度で劣る。
 公明は丹念に積み上げられた太田の個人票を継承させようと岡本の公認を19年に決定した。だが、昨年から新型コロナウイルス感染が拡大。満足に引き継げない状態が続き、陣営は「太田でなければ支援しないという声は多い」と頭を抱える。
 危機感を強めた太田は地元を離れず、企業・団体回りに専念することを決断。全国から応援依頼が舞い込む太田が選挙区に張り付くのは異例だ。
 一方、地盤が重なる自民前職高木啓の陣営には冷めた空気も漂う。今回も比例東京の名簿上位に登載されたが、地元では太田の引退後、自民に選挙区を渡す密約があったともささやかれる。公明側はこれを否定するが、自民支持者からは「いつまで公明のものなのか」との声が漏れる。
 池内は岡本に真っ向勝負を挑む。21日のJR赤羽駅前の街頭演説には、09年に太田を破り現在は立民参院議員の青木愛が参加し、激励。共産書記局長小池晃は「力を合わせ自公政権を少数に追い込む」と意気込んだ。東京進出の足掛かりとしたい日本維新の会は、保守票の切り崩しで勝機をうかがう。

 ◇立候補者名簿
 【広島3区】
 大山 宏     73 元会社員   無 新
 矢島 秀平    29 ベーシスト  N 新
 斉藤 鉄夫    69 国交相    公 前
                    推(自)
 玉田 憲勲    64 医師     無 新
 ライアン 真由美 58 元会社役員  立 新
 瀬木 寛親    57 ラジオ司会者 維 新
 【東京12区】
 岡本 三成 56 元外務政務官 公 前
                 推(自)
 阿部 司  39 元会社員   維 新
 池内 沙織 39 党中央委員  共 元
                 推(れ)
※敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。N=NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で、公=公明党、自=自民党、立=立憲民主党、維=日本維新の会、共=共産党、れ=れいわ新選組。丸かっこは推薦政党。(2021/10/22-15:50)

2021.10.22 15:50Nation

ELECTION INSIGHT: Komeito Exec Faces Uphill Battle in Hiroshima after LDP Scandal


Tetsuo Saito, deputy leader of Komeito, the junior coalition partner of Japan's ruling Liberal Democratic Party, has made an unexpected comment that took aback potential supporters at a recent LDP gathering.
   "My blood is 95 pct LDP," Saito, 69, said, his face displaying a strong sense of crisis over his uncertain prospects for success in Sunday's election for the House of Representatives, the lower chamber of parliament.
   He is running in the No. 3 constituency of Hiroshima Prefecture, western Japan, which was rocked by a major vote-buying scandal involving former LDP lawmakers over the 2019 election for the House of Councillors, the upper chamber.
   For many years, the single-seat district has been represented by former Justice Minister Katsuyuki Kawai of the LDP. But Kawai left the party in June 2020 and resigned as lawmaker in April 2021 after being accused of buying votes for his wife in the 2019 Upper House election. A guilty ruling for him was finalized this month.
   After Kawai's departure from the LDP, Komeito, a party known for its strict attitude toward money scandals involving politicians, decided to field Saito in the constituency. Previously, Saito had been elected from the Chugoku regional bloc of the proportional representation system, which includes Hiroshima.

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