遠のく経済正常化 デルタ株猛威、消費直撃
日本経済の正常化が遅れている。2021年4~6月期の実質GDP(国内総生産)速報値は、年率換算で前期比1.3%増の低成長にとどまった。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が繰り返し発令され、個人消費への逆風はやまない。感染力の強いデルタ株が猛威を振るい、7~9月期も回復は見込めず、景気停滞の長期化は確実だ。
◇五輪野球決勝「客ゼロ」
「7日夜の東京五輪野球決勝戦もお客さんはゼロだった」。東京・渋谷のスポーツバー「Fields(フィールズ)」店主、田中守さん(66)は意気消沈する。午後8時までの短縮営業で酒類も出せず、「侍ジャパン」が金メダルを獲得した恩恵を受けられなかった。
自国開催の五輪に向けて大型モニターを増設し、外国人客の来店を見込んで英語やフランス語が堪能な従業員を雇った。しかし、今は売り上げがコロナ前の4割以下に落ち込み、固定費だけで月200万円が消える。田中さんは「この状況があと2~3カ月続けば閉店も考えないといけない」と肩を落とす。
◇書き入れ時に逆風
4~6月期は、3度目の宣言で内需の柱である個人消費の勢いが鈍かった。7月12日には4度目が発令され、夏場の消費を直撃する。
居酒屋大手ワタミの渡辺美樹会長は「酒だけが原因とされて、ずっと犠牲になっている」と憤慨。東京商工リサーチによると、大手居酒屋チェーン14社の店舗数(3月末時点)はコロナ前(19年12月末)と比べ、1048店減少(14.5%減)した。
夏休みの書き入れ時を迎えた観光業も「ツアー予約はストップした」(日本旅行業協会)と苦しむ。JR西日本幹部は「8月からの鉄道利用の回復は困難で、10月以降にずれ込む」と話す。
一方、ワクチン接種で先行する海外の景気回復で輸出は好調。製造業の業績改善を受けて設備投資も増加した。日本工作機械工業会は「設備投資の回復は多様な業種に波及し、インフラや半導体、自動車関連が繁忙だ」と説明する。
ただ、長引く世界的な半導体不足は自動車の生産に影を落とす。日産自動車は22年3月期通期で25万台の減産になると予測。さらに原材料価格の上昇が新たな経営の重荷となり、4~6月期にトヨタ自動車では700億~800億円の営業減益の要因となった。
資源価格の高騰は所得の海外流出につながる。ニッセイ基礎研究所は原油価格(米国産WTI)が1バレル=100ドルまで上昇した場合、21年度の所得流出額は23兆4000億円に膨らむと試算。「企業収益が悪化し、家計の購買力は低下する」(斎藤太郎経済調査部長)と警鐘を鳴らす。
◇「V字回復」に暗雲
ワクチン接種の進展で景気の回復時期を7~9月期と当初想定していたエコノミストは、足元の感染爆発を受けて10~12月期以降に修正した。菅義偉首相は8月末までに全国民の4割超が2回の接種を完了する目標を掲げるが、デルタ株では感染連鎖を食い止める「集団免疫」の獲得に8~9割の接種率が必要と指摘される。
政府は実質GDPが年内にコロナ前の19年10~12月期の水準(年率換算546兆円)に戻るシナリオを描く。しかし、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「『V字回復』は難しく、22年4~6月期に遅れる」と予想している。(2021/08/16-19:38)
Long Road Ahead to Full Economic Recovery in Japan
The Japanese economy is unlikely to return to normal from the novel coronavirus crisis anytime soon, as consumer spending remains sluggish amid the state of emergency and the spread of the delta variant.
Japan's real gross domestic product for April-June, announced Monday, showed annualized growth of only 1.3 pct from the previous quarter. The July-September quarter is likely to see a slow recovery as well.
Zero Customers despite Baseball Gold Medal
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