家康称賛の「江川酒」復活　果実の甘み、信長も酔う？―３２０年前の方法で・静岡

　数々の戦国大名がたしなみ、徳川家康が「養老の酒」と称賛したとされる日本酒がよみがえった。約３２０年前の醸造方法で再現された「江川酒」は、果実のような香りと甘みが特長。幻の銘酒を復活させた酒蔵「万大醸造」（静岡県伊豆市）の杜氏（とうじ）、伊奈静夫さん（７４）は「こんなにおいしい酒ができるとは思わなかった。家康の気分で味わってほしい」と顔をほころばせた。
　江川酒は、平安時代から続く名家で江戸時代に韮山代官役所（現伊豆の国市）の世襲代官を務めた江川家に伝わった。
　国指定史跡の「韮山役所跡」や国指定重要文化財「江川家住宅（江川邸）」（同）を管理する公益財団法人「江川文庫」（同）の学芸員、橋本敬之さん（６８）によると、北条早雲が名付け、織田信長もたしなんだとされる。豊臣秀吉が晩年の１５９８年に京都で催した「醍醐の花見」に取り寄せたとの記録も残る銘酒だったが、代官制度改革に伴って１６９８年に醸造が途絶えた。
　復活したのは昨年５月、橋本さんが江川邸に残る約１０万点の史料から、当時の醸造方法をまとめた「御手製酒之法書」を見つけたのがきっかけだ。橋本さんは約３カ月かけて現代語訳し、万大醸造の伊奈さんの元へ持ち込んだ。
　「読んだだけでは、どんな酒ができるか本当に分からなかった」と伊奈さん。甘みや酸味などに関する情報はなく、記載通りに造ってみるほかない。今年１月、「出たとこ勝負」で仕込みを始め、２月下旬に完成。味見した橋本さんは「なじみのある日本酒とは違い、みかん果汁のような甘さ」を感じたという。
　今後は味を安定させた上で一般販売を目指すといい、当面は、世界遺産の一つ「韮山反射炉」（同）の建造を手掛けた幕末期の代官江川英龍をたたえた「江川英龍公を広める会」（同）入会者からの出資の返礼品に充てられる。入会や出資に関する問い合わせは広める会事務局のＮＰＯ法人伊豆学研究会「まちすけ」（同）、電話０５５８（７６）００３０まで。（2021/04/19-07:04）

A sake brewery in Shizuoka Prefecture, central Japan, has recreated a sake beloved by feudal warlords including the founder of the Tokugawa shogunate launched in the early 17th century.
   The Bandai Jozo brewery in the city of Izu has recreated Egawashu, a fruity and sweet sake brewed using techniques from over 320 years ago.
   "I didn't expect to make such a tasty sake," said Shizuo Ina, 74, chief brewer at Bandai Jozo. "I hope people will enjoy it feeling as if they were (Tokugawa shogunate founder) Tokugawa Ieyasu."
   Egawashu was passed down in the Egawa family, a prestigious family dating back to the Heian period of the eighth to 12th centuries. Egawa family members served as "daikan" local governors in Nirayama, now the city of Izunokuni, Shizuoka, for generations.
   The drink was named by Hojo Soun, the first head of the later Hojo clan, and enjoyed by many warlords including Oda Nobunaga, according to Takayuki Hashimoto, 68, curator at Egawa Bunko, a foundation that manages the Egawa Residence, a national important cultural property, and the national historical site of the former Nirayama daikan office.