チベット、高まる漢族の存在感=人口増で「目立たぬ波紋」―中国
中国チベット自治区で漢族の存在感が高まっている。インフラ整備などを背景に、移住者や観光客が増えたためだ。2020年の国勢調査によると、自治区の総人口に占める漢族の比率は12.2%と過去最高を更新。社会に「目立たぬ波紋」が広がっている。
区都のラサ中心部にある世界遺産のポタラ宮。その前で多くの観光客が民族衣装を着てポーズを取っていた。自治区統計局によると、24年の観光客数は6389万人と過去最多を更新した。
移住者数も急増している。中央政府は経済的に恵まれた沿海部の自治体に対し、チベット開発を加速するため、自治区へ人員を派遣するよう求めてきた。東部ニンティの巴宜区中学校は、生徒の9割ほどがチベット族だが、教師の4割は漢族だ。沿海部出身の教師も多く、授業は、チベット語を除き、原則、「普通語(中国語)で行っている」(女性教諭)という。
観光産業が伸びる中、ビジネス機会を求めて自ら移り住む人も増えつつある。ラサの土産物屋で働く30代の男性は21年に隣の四川省から引っ越した。チベット語は話せないが生活で困ったことはないといい、「普通語を話せれば十分でしょう」と語る。
だが、自治区では、急速な「漢化」を懸念する声も漏れた。08年には僧侶らによる大規模な暴動が起きたが、背景には、経済や政治に対する漢族の支配への反発があったとされている。
巡礼でラサを訪れたチベット族の女性は、経済成長により、「日々の生活は確かに良くなった」と話す。ただ、自治区内では、当局が「分裂主義者」と敵視するチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世の肖像画保持が事実上禁止されるなど多くの規制が残ったままだ。女性は「もう少し自由があればもっと良い。チベット語を使う機会も減っている」と打ち明けた。
インドに拠点を置くチベット亡命政府は今年3月、中国政府による同化政策が進んでいるとして、「チベット人のアイデンティティーが徐々に消滅しつつある」と改めて危機感を表明。同胞の団結を呼び掛けている。(ラサ=中国チベット自治区=時事)
[時事通信社]
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