2025-03-25 21:56

東京地裁、旧統一教会に解散命令=民法上の不法行為で初―「類例なき膨大な被害」・教団は即時抗告方針

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る解散命令請求について、東京地裁(鈴木謙也裁判長)は25日、文部科学省の主張を認め、解散を命じる決定をした。教団信者による不当な献金勧誘行為などについて「類例のない膨大な規模の被害を生じさせた」と指摘。法令違反を理由とした解散命令は3例目で、幹部らが刑事責任を問われたオウム真理教などとは異なり、民法上の不法行為を根拠とした初のケースとなった。
 旧統一教会は、決定を不服として東京高裁に即時抗告する方針。高裁で判断が維持されると命令の効力が発生し、教団は宗教法人格を失う。宗教活動を続けることは可能だが、礼拝施設などの財産を処分しなければならないほか、税制上の優遇措置を受けられなくなる。
 宗教法人法は、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる場合などには、裁判所が解散を命令できると定めている。
 鈴木裁判長は、教団側への過料を巡る最高裁決定を引用し、民法上の不法行為が解散要件の「法令違反」に該当するとした。その上で、「教団信者による不法行為に当たる献金勧誘などは、約40年の長期間にわたり全国的に行われた」と指摘し、被害規模は1559人、計約204億円に上ると認定した。
 教団は2009年に法令順守を強化する「コンプライアンス宣言」を出したが、その後も不法行為は続き、看過できない被害が生じていると判断。献金勧誘などの手法は悪質で、深刻な影響を長期間受けた人が相当数いることから、「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる」とした。
 さらに、献金勧誘などが教理の実践となったり、献金が宗教法人格を利用した税制上の優遇措置を受けていたりすることから、「法人格を与えたままにするのは極めて不適切で、解散が必要だ」と結論付けた。
 教団を巡っては、22年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、母親が信者だった山上徹也被告(44)=殺人罪などで起訴=が教団への恨みが動機だと供述。高額献金などが改めて社会問題化し、自民党を中心に政治家との関係も明るみに出た。
 文科省は23年10月に解散命令を請求した。地裁は非公開の審問を4回開き、現役信者や元信者を証人尋問するなどして審理を進めていた。 


 ◇決定骨子
 一、民法上の不法行為は、宗教法人の解散命令要件である「法令違反」に該当する
 一、教団信者による不法行為に当たる献金勧誘などは約40年間、全国で行われた
 一、手法は悪質で影響も長期間にわたり、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる
 一、法人格を与えたままにするのは極めて不適切で、解散が必要
 
 ◇旧統一教会解散命令を巡る動き
【2022年】
 7月 8日 安倍晋三元首相が参院選演説中に銃撃され死亡
       山上徹也被告が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨み供述
10月 6日 岸田文雄首相(当時)が解散命令請求に「慎重判断の必要」と国会答弁
   19日 岸田首相が解散請求要件に「民法の不法行為も入り得る」と答弁修正
11月22日 文部科学省が初の質問権行使(23年7月までに計7回行使)
【23年】
 9月 7日 文科省、教団が一部回答を拒否したとして過料を科すよう東京地裁に通知
10月13日 文科省が旧統一教会の解散命令を同地裁に請求
【24年】
 2月22日 解散命令請求を巡り、地裁で初の審問(同年12月までに計4回実施)
 3月26日 地裁、教団代表に過料10万円の支払いを命令
 8月27日 東京高裁が教団側の即時抗告退け、過料支払い命令を維持
【25年】
 3月 3日 最高裁、過料巡る教団側抗告の棄却決定。解散命令要件の「法令違反」に民法の不法行為も含まれると初判断
   25日 地裁、教団に解散を命じる決定
[時事通信社]

最新動画

最新ニュース

写真特集