営農再開、道のり遠く=被災農家「いつまで生活持つか」―復旧に5年超も・能登豪雨半年

昨年9月21日に能登半島北部を襲った記録的豪雨から半年が過ぎたが、被災地には土砂に埋もれたままの農地が数多く残る。復旧には最長で5年以上かかるとされ、農地を失った農家は「いつまで生活が持つか」と不安をにじませる。
石川県によると、豪雨で土砂や流木が堆積した農地約400ヘクタールのうち、今年5月の作付け再開を見込むのは約170ヘクタールにとどまる。残りの農地は河川改修や土砂の撤去に年単位の復旧作業が必要で、いまだ具体的なめどは立っていない。
「半年たったが何も変わっていない。毎日見るのは泥の山」。そう話すのは輪島市の農家、小田原寛さん(56)だ。同市房田町の約6ヘクタールの水田は最大50センチほどの土砂が当時のまま残り、「田んぼが使える状態にならないと何もできない」と嘆く。
池徹哉さん(41)も「農業は続けたいが、どこまで踏ん張れるか」と苦悩する。同市長井町の水田約7ヘクタールは河川の氾濫で一部がえぐり取られ、復旧に4~5年以上かかる「大規模被害」と判定された。
現在は建設業のアルバイトで生計を立てる池さん。知人に借りた同市三井町の水田3ヘクタールで今月から作付け準備を始めたが、収穫減は避けられない。「元の農地がいつ直るか分からず、将来の見通しが立たない」と話した。
珠洲市最大の農業法人「すえひろ」は、昨年の地震と豪雨で約140ヘクタールの田畑のほぼ全てが被災した。今年の作付面積は6割以下の約80ヘクタールにとどまる見通しで、末政博司代表(65)は「経営が不安定で、復旧を何年も待つ体力はない。従業員が残ってくれるかも心配だ」とこぼした。
県農業基盤課の担当者は「来年以降の具体的な見通しを示すのは現状難しい」と話す。土砂の堆積量が膨大であることに加え、復旧と同時に大区画化など農園の整備を求める声も上がっているためといい、「市町や集落との合意形成に一定の時間が必要になる」と理解を求めた。
[時事通信社]

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