ウクライナ侵攻「人ごとでない」=中学生向け戦争本に注目―漫画と解説で理解手助け

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって3年となる中、中学生向けに戦争を解説した書籍が注目を集めている。やわらかいタッチの漫画とイラスト付きの解説で分かりやすく原因や状況を伝える本には、「戦争は人ごとではない」という編集担当者の強い思いが込められている。
この書籍「僕らは戦争を知らない」は、出版事業などを手掛けるGakken(東京都品川区)が昨年、図書館向けに発売した。ロシアの軍事政策を専門とする東京大先端科学技術研究センター・小泉悠准教授の監修で、ウクライナ侵攻を例に「戦争とは何か」「なぜ戦争が起きるのか」をB5判136ページにまとめた。
編集を担当した沢田未来さんによると、同社が出版した図書館向け書籍の中で昨年最も売れた。図書館向けは「市販本では取り上げにくい社会的意義の高いテーマに取り組める」(沢田さん)のが特徴で、授業での活用も期待できるという。
3章とも冒頭にウクライナから避難した一人の女子中学生と日本の中学生らとの交流を描いた漫画を掲載。扱った出来事は、親族を頼って愛知県に避難した女子生徒の体験談などを基に構成した。
女子生徒を取材した沢田さんは、父親が1人で祖国に残っている話が印象深いという。「家族を危険な場所に残して外国へ避難するのは想像を絶する出来事。日本の子どもたちにも思いを巡らせてほしかった」
同書では、日本がかつて太平洋戦争に突入した背景にも目を向けた。沢田さんは「今も昔も、戦争によって理不尽に日常を奪われ続ける人たちがいる。ウクライナで起きていることは私たちにとっても決して人ごとではない」と強調する。
今年は、戦後80年の節目でもあり、「この機会にいま一度ウクライナに目を向けてほしい」という沢田さん。「この本が戦争について立ち止まって考えるきっかけになれば」と力を込めた。
[時事通信社]
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