「友好深めれば戦争起きない」=外国語注力のウクライナ学校―日本も教科書支援
【キーウ時事】開始から間もなく3年となるロシアのウクライナ侵攻の初期に激しいミサイル攻撃にさらされた首都キーウ(キエフ)の近郊イルピン。ここに日本が支援した教科書を使い、日本語も含めた外国語学習に熱心に取り組む学校がある。「国際交流を通じて友好を深めれば、戦争のような悲しいことは起きない」という教師らの強い信念の下、戦時下でも生徒たちは勉強に励んでいる。
◇「日本に行くのが夢」
「私は日本語を2年間勉強しています。なぜなら日本文化が好きだからです」。イルピンの学校「リングイスト」で、日本語で発表したのはタニア・ユラシクさん(13)。花々が描かれた桜色の衣装を着て発表に臨んだタニアさんは「私の夢はいつか日本に行くこと」と語った。
同じく日本語を勉強するクリスティナ・ポホリレツさん(13)は「漢字を覚えるのが難しい時もあるが楽しい」と話す。字幕なしで日本の映画やアニメを見たいと目を輝かせた。
同校では1~11年生の約2300人が学ぶ。語学教育に力を入れており、英語やドイツ語、スペイン語などのほかアラビア語や中国語、日本語が履修可能だ。日本語は現在7年生の1クラスのみだが、今後は拡大し、日本の学校とのオンライン交流も積極的に行いたいという。
日本政府は2024年に国際協力機構(JICA)を通じた無償資金協力で、ウクライナに約100万冊の教科書を供与。同校にも5年生向けのウクライナ文学や外国文学の教科書が届いた。授業ではウクライナの国民的詩人タラス・シェフチェンコの詩と松尾芭蕉の俳句の比較などが行われ、生徒たちは挙手して意見を発表していた。
◇校舎被害「途方に暮れた」
ワレンチナ・アントネンコ校長は、ロシア軍がキーウ近郊から撤収後の22年5月に避難先から戻ってきた時のことを鮮明に覚えている。「校舎は壊滅的被害を受け、私は椅子に座り途方に暮れた。窓は割れ、屋根は崩落していた」と振り返る。
その後、外国からの支援を得て校舎は短期間で修復された。授業再開直後はシェルターに避難する際にパニックを起こす生徒もいたが、最近は皆、状況に適応してきているという。
同校で侵攻に伴い親を亡くした生徒は11人に上る。教師の中にも夫を亡くしたり、息子が戦場に送られたりしている人がおり、長引く侵攻が影を落としている。
「ウクライナ人が殺され、打ちのめされており涙があふれてくる。平静ではいられないが、扉を閉めるわけにはいかない」とアントネンコ校長。「あらゆる国の子供たちが友情を育めるよう全力を尽くさなければならない。未来をつくるのは子供たちだから」。
[時事通信社]
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