基礎年金底上げ案に異論=厚生年金積立金活用は「流用」―自民
厚生労働省は29日、次期年金制度改革で焦点となっている基礎年金(国民年金)の給付水準底上げ案を自民党に示した。財源に厚生年金の積立金と国費を投じるため、2029年以降に実施の判断を先送りする方針を盛り込んだが、出席した議員から「厚生年金保険料の流用と誤解されてしまう」などと異論が続出。了承は見送られた。
公的年金は、少子高齢化でも制度を維持できるよう、「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みで給付水準を少しずつ抑えている。給付の抑制は厚生年金で26年度に終了するが、財政が厳しい基礎年金は57年度まで続く見通し。現行のままでは、基礎年金しか受け取れない自営業者らの老後の生活が困窮する可能性がある。
そこで厚労省は、厚生年金の積立金と国費を投じて基礎年金の抑制期間を短くし、将来世代の給付水準を3割程度引き上げる案を検討。ただ、実施には厚生年金の受給者の給付水準が一時的に下がるほか、追加の国庫負担が最大で年2兆円規模に上る見込み。このため同省は、29年の年金財政検証の結果を勘案して実施の可否を判断することにした。
29日の自民党の会合では、厚労省の案に対し「基礎年金を底上げするなら、国民年金の保険料を上げるべきだ」(閣僚経験者)といった意見が出た。同党は次回の会合で改めて意見集約を図る。
厚労省担当者は「経済が今後好調に推移すれば、厚生年金の積立金や国費を投入しなくても基礎年金の給付水準が改善する」と説明している。
[時事通信社]
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