格の違い示す完勝=井上尚、厳しい時間をプラスに―ボクシング世界戦
「70年を超える経験上、急きょ決まった選手が番狂わせを起こすことはたびたびある」。世界的なプロモーターのボブ・アラム氏が抱いた一抹の不安は杞憂(きゆう)に終わった。4回、井上尚の右ストレートを浴びた金芸俊はコーナーで崩れ落ちた。
文句なしの勝利を収めた王者は「無事に勝つことができて肩の荷が下り、どっと疲れが来た」。試合後の記者会見で苦笑いを浮かべた。
今年に入り、挑戦者が変更になった。金への対策を練る時間はほとんどなかったが、自分が積み重ねてきた「引き出し」を信じた。圧力をかけてコーナーに追い詰め、ボディーブローで相手の動きを鈍らせると、狙い澄ましたワンツーで格の違いを見せつけた。
クリスマスイブに予定されていた試合が、10日前になって突然1カ月延びた。しかし王者は「長時間かけて体を仕上げるのは自分にとってメリット」とプラスに捉えた。階級を上げて今回が5試合目。体も徐々に大きくなり「スーパーバンタムの体は完成に近づいている」との自信がある。
今年は米国やサウジアラビアでの試合も計画する。厳しい時間を鮮やかに乗り越えた31歳は「ボクサーとしての完成度は自分自身でも測れない。キャリアの最後までレベルアップできるようなトレーニングを続けていきたい」とさらなる進化を誓った。
[時事通信社]
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