幕引き急いだ習政権=「反日」封じたか―中国・深セン男児刺殺
【北京時事】中国広東省深セン市で日本人男児が男に襲撃されて死亡した事件で24日、被告の男に死刑判決が言い渡された。だが、蘇州の日本人母子襲撃事件に続き、日本人が襲われた理由は不明のまま。対日関係改善に乗り出している習近平政権が幕引きを急いだとみられる。
深センの事件が起きた昨年9月18日は、満州事変の発端となった柳条湖事件から93年に当たる日だった。中国共産党が歴史問題と絡めた反日宣伝を続けていることから、中国国内でもSNSで「政府が反日をあおった結果だ」といった書き込みが相次いだ。
それでも中国政府は、事件は「偶発的な個別案件」と主張。真相解明を求める日本側に対し、司法手続きに委ねる姿勢を示して外交ルートでの説明を拒んできた。
裁判は外国人記者の傍聴が許されず、初公判で判決が言い渡されるスピード審理。公判では、犯行は「インターネットで注目を集めるため」とされたが、動機に関して日本についての言及はなく、結局、真相は闇の中だ。ただ、被告は「日本国大使館と話したい」と口にしたという。意図は不明だが、日本を意識していた様子もうかがえる。
中国では司法も共産党の指導下にある。蘇州、深センの両事件についてある西側外交筋は「取り調べ段階で『日本人を狙った』という供述が出た可能性があるが、習政権の意を受けた司法部門や地元当局が表に出ないよう封じたのではないか」と話す。
習政権は対米関係の悪化に備え日本との関係改善を進めており、日中間の懸案を減らしたい意向。景気低迷が続く中、日本企業の投資を呼び込むためにも、両事件の処理を急いだもようだ。
中国側の姿勢の変化を背景に、日中関係は石破茂政権発足後、改善ムードに包まれている。だが、中国のSNSでは反日的な投稿が後を絶たない。今年は抗日戦争勝利80年で、反日機運が高まる恐れもある。日本外務省は深センの事件について「一定の動機の説明があったと受け止めている」としているが、求めてきた真相解明にはほど遠い。在留邦人の不安が拭えなければ、関係改善はうわべだけにとどまりかねない。
[時事通信社]
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