踊りに込めた鎮魂の祈り=阪神大震災が転機―ギリヤーク尼ケ崎さん
「今の踊りはすべて神戸からつながっているんですよ」―。半世紀以上にわたって国内外の街頭で創作舞踊を踊り、「伝説の大道芸人」とも呼ばれるギリヤーク尼ケ崎さん(94)=本名・尼ケ崎勝見=が18日、神戸市長田区の「みくらすいせん公園」で、同市では10年ぶりの青空舞踊公演を行った。30年前、阪神大震災の犠牲者に鎮魂の踊りをささげたことが大きな転機になったと語る。
北海道函館市出身。初公演は1968年、東京・銀座の公園だった。津軽三味線に合わせ、一心不乱に舞うスタイルを確立し、「鬼の踊り」と称された。
阪神大震災1カ月後の95年2月、爪痕が生々しい長田区の菅原市場付近で、犠牲者を供養するために踊った。当時、現地でその姿を見た主婦奥村初美さん(54)=大阪府岸和田市=は「踊り始めた瞬間、亡くなった方の魂が浮き上がるようだった」と振り返る。
この経験を経て、犠牲者を鎮魂するための「祈りの踊り」こそが自分の目指すものだと自覚。手術を受けた年を除き、毎年1月17日に神戸を訪れて踊った。東日本大震災などの被災地や、2001年に同時多発テロ事件が起きた米ニューヨークの世界貿易センタービル跡地近くでも鎮魂の踊りをささげた。
神戸での踊りは震災20年の節目の15年まで続けた。近年はパーキンソン病などの病を抱え、公演でも人の助けを借り、車いすも使うようになったが、昨年7月には能登半島地震で被災した石川県輪島市を、同8月には福島県楢葉町を訪問。「踊る姿を見て元気をもらった」とのファンの声に支えられ、公演を続けてきた。
18日の公演後には、「まだまだ頑張って踊りますから」とファンに笑顔を見せた。これからも「祈りの踊り」は続く。
[時事通信社]
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